第52話:第1回新しい伝統こけし展
鳴子木地玩具協同組合に仙台郷土玩具の会から「新しい伝統こけし展」への出品・参加を要請する話があったのは平成になって間もない頃であった。その趣旨は「伝承技法を遵守しながらも、それに現代感覚を盛り込んで創意工夫を加えた最新作の展覧会」ということで、第2次こけしブームも下火を迎える中、造形・描彩の様式化・固定化が顕著となり、こけし本来の素朴な美しさ、個々のこけしの活力あるおもしろさが薄れつつあるという状況があったからである。平成に入ってから従来型の伝統こけしにマンネリ感と物足りなさを感じていた福寿さんにとって、この展覧会は格好の舞台となった。平成2年6月に開催されたこの展覧会に福寿さんは12本ものこけしを出品しており、これは展覧会参加工人中最多であった。この12本の内8本は、従来型の形態・描彩をベースに若干の工夫を加えたものであるが、残る4本は「福寿型」と称してこの展覧会のために新たに作り出したものであった。
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