第7話:動力ロクロ導入
それまで、足踏みロクロで木地挽きをしていた福寿にとって、それは待ち待ったものであり、格段に作業効率を上げるものでもあった。前年のコンクールでは入賞もして、ますますこけし作りにも意欲が湧いていた。一方で胴上下の赤ロクロ線を2段にして、鬢を大きく跳ね上げた描彩は、正面から見ると鬢が目立ち過ぎてちょっとやり過ぎかという感じもしていた。動力ロクロのお陰で木地挽きにもゆとりが出来てきたので、今一度、勘治・盛こけしの原点を見つめ直してみた。
< 1尺、8寸(S26.5.8) >
先ず、木地形態では頭は大きくして、胴の裾部を勘治こけしのように台状にしてみた。胴上下の赤ロクロ線も太く1本で塗りつぶした。描彩では鬢を外側に寄せて正面からは目立たないようにし、鬢下部の跳ね上げも少なくした。一方で、頭頂部には髷を描き、前髪と鬢の間の鬢飾りを大きく華やかに変えた。とは言え、秋田時代に見た勘治こけしの印象は朧気であり、父に聞いてもはっきりしない。結局自己流に試行錯誤で描くしかなかった。眉は水平で横一線に近く、目は一筆目(大寸では細い一側目)、鼻は湾曲の深い丸鼻となって明るい笑顔の表情となった。胴模様の菊花は花弁を長くして胴一面に大きく描き、一段と華やかさが増した。
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