第4話:鳴子に戻ってみると…
< 盛(S23.11.23)>
本荘の由利木工所で木地修業を始めた福寿は鳴子に戻る頃には一通りの木地挽きは出来る様になっており、父盛の木地下を一手に引き受けて仕事をこなしていた。帰郷した鳴子で先ず手掛けたのは本荘で作っていた伝統的なこけしであった。
< 大沼力・桜井昭二(S22.6)・高橋武男 >
しかし、鳴子に戻って一段落し、周りで作られているこけしを見て、福寿は驚きを隠せなかった。クリクリした大きな瞳が顔の下方に描かれた西洋人形を思わせる愛らしいこけしが店々の棚に一面に並んでいたからである。福寿が木地を挽き、盛が絵付けをした昔ながらの「高勘」こけしは観光客には人気が無く売れ行きは芳しくなかった。
< 秋山忠市・盛(S24.11.23) >
売れないと分かると盛の対応は早かった。秋田での生活では、入れ子こけしやモンペこけしなど幅広く色々な物を作っていた経験がある。頭を角張らせ、そこに下目で眼点の大きな可愛らしい顔を描いたこけしを作った。それは今までの「高勘」こけしとは明らかに異なるこけしであった。
23年春、一家はようやく鳴子新屋敷の自宅に戻り、木地業を再開することになった。25年には仙台に居た兄盛雄も鳴子に戻って合流し木地業に就いた。これより、戦後の「高勘」が本格的にスタートしたのである。鳴子に戻った福寿は当初、足踏ロクロで仕事をしていたが、26年より電気の動力ロクロに切り替え、精力的に仕事に励むことになった。
福寿が木地を挽き、盛が描彩を行った昔風のこけしは人気が無く、売れ行きも捗々しくなかった。流石の盛もこの風潮には抗しきれず、鳴子を席巻していたクリクリ下目のこけしも作るようになった。
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