第19話:「ぼく」・・・
立体「鼻」を取り入れたもうひとつの作品が「ボク」である。「宝珠」も「ボク」も同型の姉妹のようなこけしであるが、スタイリッシュな「宝珠」は胴模様が正に名前の「宝珠」ということもあって、何か仏教的な如来や菩薩のように有難いもの、恐れ多いものとして飾って置くという雰囲気があった。そこで「ぼく」はもっと身近で気軽に楽しめるものとして作られた。イメージ的には「宝珠」が「豪」で鋭角的な感じ、「ぼく」が「柔」で丸っこい感じである。福寿はこの「ボク」を白石で開催された第2回全日本こけしコンクールに出品し、第1位の農林大臣賞を受賞した。こうして、この昭和35年に、福寿は2つの全国規模のこけしコンクールで最高賞を取り、新型こけしの分野でその頂に立ったのである。
こちらが、「ボク」2本である。殆ど同型のこけしであるが、首から巻いたマフラーの絵柄と眉・目の描彩に若干の違いがみられる。右こけしは頭全体が丸く、頭頂部のビリカンナは小さい。眉は湾曲を持った線状で目はやや横長の垂れ目になっている。またマフラーの絵柄は小さいが数が多い。一方、左こけしでは頭頂部がやや平らになり、その部分に大きめなビリカンナを入れている。眉は楕円状に膨らみ目も丸みを増している。マフラーの絵柄は大きくなり白いX字の模様は右こけしの半分の4つになっている。
改めて、「宝珠」(右)と「ボク」(左)を並べてみた。昭和35年のピークとなったこけしである。
「宝珠」と「ぼく」の立体鼻を横から見てみた。「宝珠」は縦長の鼻、「ボク」は丸い鼻である。
こちらは、「ボク」の応用こけしである。この2本は別々に入手したものであるが、立体鼻にはなっておらず、大きな花柄の着物を着ていて、あたかも親子のような雰囲気を持ったこけしである。こうして並べてみると、母と娘、姉と妹が語らっているようである。
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