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第15話:工人「遊佐福寿」誕生!

Photo_20200607121301 思い切って新型こけしの世界に飛び込んだ福寿であったが、新しいこけしの創作は順調なものではなかった。これまで親しんできた伝統的な形態や様式・描彩は体に染み込んだものであり、それからの脱却に苦労していた。

そんな折、福寿に縁談の話が起こった。相手は下駄を商っていた遊佐やの長女の節子で、その婿養子にどうかということで、昭和31年の夏であった。何回かのデートを重ね、その年の暮れには婚約が決まった。翌32年4月26日に二人は結婚し、福寿は長年親しんだ「高勘」の家を出て遊佐家の養子となった。福寿27歳の時であり、ここに工人「遊佐福寿」が誕生したのであった。

「高勘」本家から独立したことにより、福寿のこけし製作はより自由になった。それと共に福寿家を支えていくという責任感も出来た。新型こけしの勢いは盛んで、福寿の制作意欲を益々刺激していた。最早、誰に邪魔されるわけでもなく、頭に浮かんだアイデアを次々に形にしていった。そんな中に「首振り」があった。南部系のキナキナのように首の嵌め込みを緩くして、頭がくらくらと揺れるようにしたものである。なお、この首振りこけしの中で「南国の踊り子」は昭和33年の鳴子町物産展で宮城県知事賞、翌34年の全日本こけしコンクールで白石商工会議所会頭賞を受賞している。

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< 南国の踊り子6寸、6寸 >

こちらが「首振りこけし」である。右は前回(第14話)のこけしと同様式のこけしであるが首が揺れるようになっている。大きさは6寸。胴には1ミリ毎に細いロクロ線が引かれ、その上から墨の濃淡で花模様を描いているが、花は菊ではなく牡丹であろうか。頭頂は蛇の目ではなく薄墨で水引を描いた伝統こけしの様式になっている。眉と鬢には薄墨を使い、目は塗り潰しの一筆目となっているため面描は新型こけしの顔になっている。左は「南国の踊り子」という名称の新型こけし。大きさは6寸。胸部が膨らんで腰が狭まり、そこから裾にかけて膨らんだ人型のスマートな形態である。こちらも頭は緩い嵌め込みでクラクラと揺れる。胸部には橙色で渦巻模様を描き、そこから下は黒、水色、橙色のロクロ線を幅を変えて引いている。頭頂部は蛇の目でその外側にビリカンナをヘアバンドのように入れている。髪は前髪から左右に分かれて耳の位置に流している。眉は薄墨、鼻は白色で描かれ伝統性は感じられない。全体的にエキゾチックなこけしであり、これはもうはっきりと新型こけしと言えるものになっている。

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首の嵌め込みは、こんな感じになっている。特に左の南国の踊り子では胸の上部が細くなっており、ここに細い首を嵌め込むには繊細な技術が必要となる。

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