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第16話:縄文こけし

Photo_20200608204901 結婚した昭和32年の秋には、下駄を商っていた遊佐や商店の店内に自作のこけしを並べて「遊佐こけし店」を開業した。そして翌年の昭和33年2月には福寿夫婦に長男寿彦が生まれた。福寿の「寿」を継いだ名前に将来への期待が込められている。「高勘」から独立して1年ほど経ち、息子も生まれて、福寿は益々こけし製作に邁進することになる。

さて、新型こけしの場合には、それぞれのこけしに「作品名」を付けることが普通であり、福寿のこけしにも作品名が付けられている。その中でも今回のテーマである「縄文こけし」は、この昭和33年の第5回全国こけし人形コンクールで作家協会長賞を受賞し、一躍メジャーなものとして有名になった。同じ名前のこけしであっても、評判の良いものは長い期間作られ、その間に多少の変化は出てくるものである。この縄文こけしも数年間作られた。

 

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前回のこけし2本(左右)と並べてみた。中央が今回の縄文こけし、左が南国の踊り子、右は名称不詳のこけし。福寿の新型こけしの形は、頭と胸と胴という3ブロックに分かれ、これを色々と変化させている。これまで、胸と胴は球形であったが、この縄文こけしでは蓋を被せたコップ型に変わり、精悍なイメージとなった。胸と胴の渦巻模様は南国の踊り子からのものである。腰の括れ部はいずれも黒のロクロ線で締まり感を演出している。こうしてみると、縄文こけしはこれまでの色々なアイデアを組み合わせて作っているのが分かる。


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< 縄文こけし6寸、8寸、7寸8分 >

こちらに「縄文こけし」を3本並べた。右から7寸8分(s32~33頃)、8寸(s33頃)、6寸(s34~35頃)である。頭はこれまでの球形から髷を削り出しているが、この髷は勘治型の髷から思い付いたのであろう。平面に描いた髷を立体に成形した訳だ。胸、胴のコップの蓋部はビリカンナで装飾を入れているが、これも右は胸部のみ、中央は胸部と胴部、左は胴部のみと変化している。中と右では、胸と胴の表面を薄墨で塗って縄文の時代感を出している。3本を比べると、右から左に行くにつれて飾りや描彩が簡素になっていくのが分る。

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上記、中央と右こけしの頭部と顔を比べてみよう。先ず、髷であるが、この立体髷は斜めにしかも2つが別方向に付いている。これはロクロで挽く場合の軸が異なるということで、一旦片方を挽いた後でロクロから外し、方向を変えてロクロに取り付けてもう片方を挽かなければ出来ない。これは並大抵の木地技術では出来ないことだ。後年、福寿さんにその事を聞いてみたら、「企業秘密だよ!」と言って笑っていた。さて、この髷であるが右は丸い膨らみが2段になっていて、下段を黒で塗り上段には赤で渦巻を描いている。一方、左では丸い膨らみは1段だけで、その外側を黒で塗り、内側に渦巻を描いている。次に顔は、右では目が中央にあって眉との間が開いている。十日月の目は両瞼の端が離れており、丸い眼点である。左は目が上がり眉との間隔は狭まった。目は横に長くなり眼点も楕円形である。口が右は赤一筆、左は下に凸の赤口になっており、右は幼子のキョトンとした表情、左は明るい笑顔となっている。

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この角度からの眺めは、ビリカンナの細工も良く分かってがなかなか良い! この縄文こけしは、頭部の立体髷といい、胴部のビリカンナといい、これまでの福寿こけしのロクロ技術を集大成したようなものだ。1本作るのに大変な手間がかかっていることが見て取れる。

 

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