第20話:新型こけしの終焉
昭和35年は福寿にとって新型こけしを究めたと言っても良い年であった。2つのコンクールで最高賞を取った効果は大きく、「宝珠」「ボク」を筆頭にその他の新型こけしも好調な売れ行きを示していた。しかし、福寿はこの受賞で全力を出し切った状態であり、その後、この2作を超えるようなこけしは作られなかった。そして、全国的に広がっていた新型こけしのブームにも陰りが見え始めていた。殆ど新型こけしでスタートした白石の全日本こけしコンクールも昭和36年の第3回からは、第1部に伝統こけし、第2部に新型こけし、第3部に創作こけしと分れて審査するようになった。この第3回の第2部で福寿は「希望の春」で千趣会長賞を受賞したが、兄の盛雄は第1部で宮城県物産振興協会長賞を受賞していた。その後も福寿は昭和39年まで「雪」シリーズの新型こけしで中位の入賞をしていたが、昭和40年代に入ると新型こけしとは決別して伝統こけしに打ち込むようになるのである。
福寿の「雪」シリーズは「雪」をテーマにしたもので、概ねマントを纏った姿態になっている。「雪ん子」「雪国」「雪帽子」などの名前が付いている。この2本は中でも代表的な「雪ん子」である。大きさは大(左)が6寸、小(右)が3寸。これまでの福寿こけしは新型と言えども、頭と胴は分かれており、本作のように頭と胴が一体化したものは無かった。そういう意味からも、これまでの作品とは別趣のものとなっている。形だけでなく、色彩も茶系の濃淡のみで描かれている。白一色の雪の世界に合わせたものなのであろう。
こちら、右は「雪ん子」、左は名称不明である。「雪ん子」が頭と胴が一体なので対して、左の作では頭がマントの中から覗いているような造形になっている。ここまで来ると、流石にもうロクロで作られたこけしとして見るのは難しい…。
最後に、これらの新型こけしが観光地のおみやげこけしとして売られていた証拠を示しておこう。この2本では、胴底に近い部分に「飯坂♨」の記載がある。この記載は福寿の署名と筆が違うので、おそらく、飯坂温泉の土産物屋が仕入れて後から書き入れたか、購入者が記念に書き入れたものと思われる。
これにて、福寿の新型こけしの時代は終了! 次回は、時間を戻して、福寿が勘治写しを作ってから以降の勘治型を眺めていこう!
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