第39話:時代と共に・・・ (s39_41)
1964年(昭和39年)は東京でアジア初のオリンピック大会が開催された年である。東海道新幹線も開通し、これを境に日本は高度成長期に突入していくことになる。そんな世の中の風潮は東京から日本全体に広がっていき、東北のこけし産地にも及んでいた。新型こけしの世界にも身を置いていた福寿は敏感にそれを感じていた。人々は本格的なものを求めるようになり、デザインの新規さを表現した新型こけしから旧来の様式を引き継いだ旧型こけしが見直されるようにもなった。「伝統こけし」という名称が定着してその地位も固まっていった。そうした流れの中で、旧型こけしの良さを残しながら、いかに時代の要求を取り入れたこけしを作るかに福寿は腐心していた。30年代の福寿こけしは胴が太く、全体的にふっくらとした感じであった。それが40年代に入ると、細身でスタイリッシュな近代的な感じのこけしに変わっていくのである。
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