第32話:所帯を持って・・・ (s32)
昭和32年4月、福寿は遊佐節子と結婚して遊佐家の養子となり「高勘」から独立して、駅前の下駄商店の一角に「遊佐こけし店」を開いた。これまでは実家の「高勘」のために働いてきた訳だが、これからは自分と家族のために仕事に励むことになった。こけし作りに関してもより自由に作れることになった。そんな中から、普通型こけしについても変化が出てきた。それが端的に現れているのが、肩と肩の山のロクロ線の様式である。特に肩の山のロクロ線の様式はそれまでの勘治様式を止めて標準的な様式に変わった。この様式は、以降「普通型」の様式として続いていくことになる。
こちらのこけし、大きさは8寸で、胴底に「三十二年 九月十三日」の書き込みがあり、結婚してから半年ほど後のものと思われる。前回作では頭がやや縦長で角張っていたが、本作では縦長が解消されて丸みも増した。
改めて、前回の作(右、昭和30年)と比べてみよう。頭の形の他、胴もやや細くなってスマートな印象を受ける。目は中央に寄って眼点が大きくなったため、愛らしさの増したこけしとなった。なお、8寸の大きさで鬢が4筆描きなのはこの時期だけの特徴でもある。
肩の山のロクロ線の様式を比べてみよう。左が前回作で勘治様式のロクロ線、右が本作で標準様式のロクロ線である。これ以降、勘治様式のロクロ線は勘治型に、標準様式のロクロ線は普通型に描かれるようになる。
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