第31話:独身時代・・・ (s30)
福寿が本家「高勘」で生活していた独身時代、その作るこけしは「高勘」の標準的なこけしであって、それは福寿が父盛や兄盛雄用に作ったものと同じ木地に描彩を施したものであった。木地下には木地を挽いて大寸なら胴のロクロ線も引いていた。このロクロ線は、胴の上下と肩、肩の山に引いたものであって、このロクロ線の引き方は西田勘治の写しを作ってから大きく変化していた。特に、肩の山のロクロ線は太い赤ロクロ線2本で1本の細い赤ロクロ線を挟んだもので、これを勘治様式と呼ぼう。このロクロ線の様式は福寿の「高勘」時代の大きな特徴であって、結婚する(昭和32年)まではこの様式が続く。
こちらは、昭和30年前後と思われる普通型のこけし2本である。左は8寸、右は7寸である。先ずは、木地形態とロクロ線を見て頂きたい。肩は丸みが少なく胴は直線的で反りは少ない。胴上下の赤ロクロ線は太く、肩の山の赤ロクロ線は勘治様式。赤の色が深い朱色ということもあって、濃厚な雰囲気を持っており、これ以降の普通型とは明らかに異なる。胴模様は8寸は「高勘」標準の横菊(上)と正面菊(下)の組み合わせ、7寸は二輪の正面菊。7寸以下の菊模様は、この二輪正面菊を描くようだ。
次に頭部の描彩を見てみよう。頭は縦長で角張っており、前髪と眉の間の額が大きい。眉と上瞼の描線は細く、左の目尻が下がる癖が見られる。表情はおとなしい。この2本では、鬢飾りの様式が異なるのが分る。特に7寸では勘治様式の鬢飾りとなっている。この時期では、勘治型、普通型と言っても、未だ完全に確立されたものとはなっておらず、両者の様式の混在もみられるのである。
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