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第45話:本格的な勘治型へ (s38)

S38_20200822204901 昭和30年代も後半に入ると、こけし界の様相も変わってきた。一世を風靡していた新型こけしにも陰りが見え始め、一方で「伝統こけし」という名称が定着しだした旧型こけしが見直されてきたのである。こけし界の先達たちが進めてきた復元(写し)による古作こけしの復古運動がブームになってきたのである。そして新型こけしの製作に精力を注ぎ、その分野での頂点を極めた福寿は、勘治型への再挑戦に向けての意欲が沸々と湧き上がっていた。そんな折、昭和38年2月、東京日本橋三越で「第1回木形子展」が開かれることになった。福寿はこのコンクールに向けて新たな勘治型の製作を始めた。先ずは「原」の勘治こけしをじっくり観察することから始まった。幸い、鳴子町役場には深澤要氏が寄贈した勘治こけしが保管されていた。昭和27年に福寿が写しを作ったのは西田峯吉氏が所蔵していた勘治のこけし(西田勘治)だったので、それ以降に福寿が作った勘治型こけしは西田勘治を元にしたもの(西田勘治型)であった。ところが、今回参考にしたのは深澤氏の勘治こけし(深澤勘治)であり、これ以降に作られたのは基本的には深澤勘治型ということになる。そして、この第1回木形子展で、福寿の出品した勘治型は見事に第1位優秀賞を受賞した。

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このこけしは、平成元年3月15日に東京銀座の松屋デパートで開催されていた鹿間時夫氏コレクション展にて入手したもの。印や書き込み等は無いが、鹿間氏の所蔵品ではないかと思われる。大きさは尺1寸5分(勘治の原寸)で、昭和38年作か。頭は縦長で角張っており、頭頂部は扁平である。前髪は小振りで頭頂に近く描かれ、正面からは先端しか見えない。角髪(みずら)上部の丸めは小さく、そこからばっさりと長い髪を垂らしている。眉太く、下瞼は水平からやや上凸気味に微妙なカーブで描かれており、味わいがある。口も単なる丸い赤点ではなく、筆の動きが感じられる。胴上下に引かれた緑のロクロ線は非常に太く、色はブルーに近い。

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頭頂部の髷の描彩では、左右の丸い髷の間の赤く塗り潰した分け目が小振りで前髪の直後に描かれているのが興味深い。これ以降は左右の分け目一杯に大きく描かれる。

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深澤勘治(写真右)を忠実に写したと思われるのは胴模様に顕著に現れている。胴には二輪の大きな菱形正面菊とその両脇に4つの蕾を描いているのだが、蕾の花弁数まで同じなのである。即ち、胴左側(上写真左)は上の蕾が2筆で下の蕾が1筆、また胴右側(上写真右)は上の蕾が2筆で下の蕾が3筆なのである。なお、この花弁数は程なく4つの蕾とも2筆になってしまう。


この勘治型では、蕾を包んだ崩が1筆で描かれているなど、深沢勘治を未消化な部分もあるが、本格的な勘治型の出発点を感じさせる重要なこけしである。

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