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第54話:第3回新しい伝統こけし展(平成6年6月)その1

Fukujyu_ndento_3rd_kao 平成2年から隔年で開催されてきた「新しい伝統こけし展」は停滞しつつあった伝統こけし界に新風を吹き込むものとして評価され、出品する工人数も増加してきた。そして最後となる第3回目は平成6年の6月に開催された。参加・出品工人は127名(314点)に達し、意欲的な作品も多く見られるようになった。福寿さんはこの第3回展覧会に実に18本もの作品を出品している。二桁出品は他におらず圧倒的な数であった。新しい伝統こけしとして挑戦してきた福寿こけしの集大成と言っても良いであろう。その内容は伝統的色彩の濃いものから、表情・胴模様に新しい工夫を取り入れたもの、木地技術の粋を凝らしたもの、その融合作までと幅広く、中には伝統こけしという範疇からは超越したものまでが見受けられる。今回はその中から面描の異なる3点を紹介しよう。口絵写真は、その3点の内の1点の表情である。

Fukujyu_ndento_3rd_3hon

Fukujyu_ndento_3rd_3hon_yoko

こちらに第3回展覧会に出品したものと同手の3本を並べてみた。大きさは左から9寸、9寸、8寸7分である。木地形態は(左)は従来からの伝統的なもの、(中)は肩が張って肩の山が無くシャープで現代的なもの、(右)は胴中央やや上に帯状の括れを2本入れ、胴上下はノミで削って10面体にしている。ここまで来ると(右)のこけしを伝統こけしと呼ぶのはかなり無理があるだろう。胴模様も三種三様で、(左)は正面菊の各花弁の長さを変えて、打ち上げ花火が開いた感じ(花火菊と呼ぼう)になっているが伝統こけしの模様としてみても特に違和感はない。(中)は胴の真ん中に赤の太いロクロ線を入れて、その上下に枝垂れ菊を配している。こちらはちょっとお洒落な胴模様であるが、新感覚な胴模様として受け入れられる。(右)は花弁の描線を崩して草書体風の菊模様になっているが、やはり木地形態の特異性が目立ってしまう。

Fukujyu_ndento_3rd_3hon_atama

Fukujyu_ndento_3rd_3hon_kao

こちらは、3本各々の頭頂部と面描である。頭頂部の髪と水引に関しては、(右)は従来の様式で、(左)と(中)は新様式になっている。次に表情はどうであろうか。面描に関しては、(中)が従来からの様式、(左)は上瞼の目尻を鯨目のように湾曲を付け、眼点を中央寄りで大きめに描いている。また(右)では上下の瞼のある二側目にしているが、下の瞼は外側しか描かず、内側は大きめな眼点のみが描かれ、やはり中央寄りの表情になっている。鼻は(中)が猫鼻、(左)(右)は長めの丸鼻。口はいずれも一筆の墨に紅を入れている。

こうして、3本のこけしを見てみると、それぞれに福寿さんの工夫とアイデアが盛り込まれているのが分かるのである。

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