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第56話:新伝統からソニー頒布へ

Fukujyu_ndento_1me_kao 新しい伝統こけしへの挑戦は、平成6年6月の第3回展覧会をもって一段落する。ここ数年、木地形態や描彩に関して新しい試みに挑戦して各種の作品を作ったが、それらをそのまま作り続けることはなかった。特に形態の立体化は大変な手間を要する一方で、伝統という範疇からは大きく逸脱するものでもあり、以後作られることはなかった。福寿さんがそこから進むべき道は、やはり伝統的なものへの回帰であった。平成7年になると、新伝統では見られなかった一筆目に頬紅のこけしが見られるようになった。このこけしは、木地形態は完全に「高勘」の様式であったが、胴模様には新伝統で作り出した菊模様を描き、面描は新しく考え出したものであった。とは言え、眉の無い一筆目は、勘治の立ち子の特徴であり、それの応用でもある。それをそのまま大寸こけしの顔に描いたのでは寂しいので、頬紅を追加したのであろう。口絵写真は、その表情である。

Fukujyu_ndento_1me_3hon

Fukujyu_ndento_1me_3hon_yoko  

こちらに、この手のこけしを3本並べてみた。左から6寸8分(平成7年10月)、8寸5分(平成7年12月)、6寸4分(平成8年6月)である。左は平頭に肩の張った木地形態であり、昭和7年前後の盛こけしの木地形態になっている。胴模様は新伝統の枝垂れ菊で花芯に緑を使ったものもある。中央は頭は普通の形になり、胴は大正期の盛こけしの様式となっている。胴模様は「高勘」の伝統的な菊模様である。右は胴上下に太い赤ロクロ線を配しており、ソニー頒布こけしの様式になっている。ソニー頒布の話は平成7年には正式なものとなっており、そのころから福寿さんはソニー頒布用のこけしの試作に入っていた。こうして同じ形式のこけしを制作順にならべてみると、新しい伝統こけし展からソニー頒布への作風の変化が見て取れるのは面白い。口の描法も、左は二筆の笑口、中は一筆の紅口、右は二筆をくっ付けた口になっているのが興味深い。

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