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第52話:第1回新しい伝統こけし展(平成2年6月)

Fukujyu_ndento_kasa_kao 鳴子木地玩具協同組合に仙台郷土玩具の会から「新しい伝統こけし展」への出品・参加を要請する話があったのは平成になって間もない頃であった。その趣旨は「伝承技法を遵守しながらも、それに現代感覚を盛り込んで創意工夫を加えた最新作の展覧会」ということで、第2次こけしブームも下火を迎える中、造形・描彩の様式化・固定化が顕著となり、こけし本来の素朴な美しさ、個々のこけしの活力あるおもしろさが薄れつつあるという状況があったからである。平成に入ってから従来型の伝統こけしにマンネリ感と物足りなさを感じていた福寿さんにとって、この展覧会は格好の舞台となった。平成2年6月に開催されたこの展覧会に福寿さんは12本ものこけしを出品しており、これは展覧会参加工人中最多であった。この12本の内8本は、従来型の形態・描彩をベースに若干の工夫を加えたものであるが、残る4本は「福寿型」と称してこの展覧会のために新たに作り出したものであった。

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こちらが、従来型の延長線上にあるこけし。大きさは6寸7分。ベースは古鳴子型で全体の形態は同じだが、胴上下と肩の山に鉋溝を入れているのが従来型との相違点。「高勘」のこけしには基本的には胴に鉋溝は入らないので新しい挑戦ではあるが、鳴子の他系列には見られる様式である。胴下部に描かれた正面菊には上部に2輪の蕾が描かれ、胴下部の添え葉も新しい描法となっている。胴上部の深澤要の歌詞は福寿さんのアイデアで特別に入れたものと思われるが、展覧会に出品されたものには書かれていない。用材は桜である。本こけしは平成6年7月に訪問した時に頂いたもので、その時は新伝統こけしとは思っていなかった。

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こちらが、「福寿型」のこけし4点。大きさは大が8寸7分、小は5寸6分である。左3点は笠被り、右1点は髷である。こちらは木地形態から新たに挑戦したものである。鳴子系にはそれまで見当たらなかったものの、笠を被ったこけしは他系統ではよく作られている。そのため自身のこけしに単に笠を被せただけでは我慢できなかったのであろう。その笠を斜めに傾けて被せたのである。よくハイソな女性が小さい帽子を斜めに被ったような感じである。通常の真っすぐな笠の場合、ロクロの軸は同じ同心円となるため作るのにさほど問題はないが、斜めになると軸がこけし本体とは別角度になるため、これを1本の木から挽き出すのは並大抵のことではないはず。その挽き方は企業秘密ということで、息子の寿彦さんも教えて貰えなかったそうだ。胴の中央部に大きな括れを入れ、胴裾をやや絞った形態は全体に丸みを帯びた優しい形態で一筆目ともども暖かい品格を漂わせている。左2本は胴上下に赤と緑のロクロ線を配し、胴下部には大正型に描かれる正面菊を一輪大きく描いている。右から2本目は形は同じであるが、胴上下のロクロ線を線の太さに強弱を付け手描き風に描いている。また、胴模様の菊花も大輪の菊の花弁が大きく垂れ下がったような新様式(クラゲ菊と呼ぼう)になっている。

右端のこけしでは、頭頂部の二つの髷を立体的に仕上げている。これは昭和30年代に作った縄文こけし(新型こけし)でも試していた技法で、それを洗練した形に仕上げている。胴上下のロクロ線と胴の菊模様は、左の笠こけしと同様である。なお、右2本は桜材を使っている。

Fukujyu_ndento_1st_atama_ue Fukujyu_ndento_1st_atama_yoko

「福寿型」の笠と髷の造形をアップにしてみた。

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なお、笠こけしには胴底の署名の他に、胴裏に「福寿こけし」と書き込みがしてある。

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