第57話:ソニー頒布とその周辺のこけし
平成8年7月、ソニーファミリークラブによる『名工の逸品「伝統こけし」紀行』の頒布が始まった。この頒布は「新しい伝統こけし展」の中心メンバーであった仙台郷土玩具の会会長の高橋五郎氏がプロデュースしたもので、各工人が従来の伝統こけしに工夫を凝らした作品が取り揃えられていた。福寿さんも15人のメンバーの一人として名を連ねている。このソニー頒布の話は「新しい伝統こけし展」が終わって間もない頃に持ち上がった。第3回展覧会で全精力を使い果たした福寿さんは、ソニー頒布用のこけし制作に取り掛かる。既に伝統的なものへ舵を切っており、「高勘」の伝統的なものをベースにすることになった。ベースの型は「高勘」としては目新しく見える平頭で肩の角張った、昭和7年頃の盛こけしに決まった。さて、そこにどのような描彩を施すか…。口絵写真はソニー頒布こけしの表情である。
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