第11話:原点への回帰
土橋慶三氏の熱意によって、盛・福寿の両名が勘治のこけしの写しを作ったことにより、土橋氏の今回の鳴子訪問の一つの目的は達成されたが、最も大事なことは現状の鳴子こけし全体を昔のような個性に溢れ生気に満ちたこけしに戻すことであった。そのため、土橋氏は「高勘」以外にも、高橋武蔵、大沼誓、大沼新兵衛、桜井万之丞、岡崎斉、伊藤松三郎、大沼健三郎、松田初見などの長老を始め、多くの若手工人とも会って、その想いを語った。盛も土橋氏の話を聞き、勘治こけしの写しを作ったことにより目が覚めたのであろう。本来自分が作ってきたこけしを振り返り、本荘から鳴子に戻ってきた当時のこけしを思い出して作った。その想いは福寿も同じで、自分の型として作っていた跳ね鬢のこけしを一先ず横に置いて、「高勘」本来の盛こけしを継承したこけしを作り始めた。
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