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第24夜:弘道の微笑み(S34年)

Hiromichi_s34_kao_2 今夜の話はまた弘道のこけしである。昨夜(20日)、帰宅すると18日に落札した弘道のこけしが届いていた。落札してから僅か2日にして待望のこけしが手元で見ることが出来るのである。これもネット社会の恩恵なのであろう。今では、お金さえ出せば、戦前の古品であろうと、入手難工人のこけしであろうと、自宅に居ながらにして煩わしい交渉をすることもなく入手できるのである。単にこけしそのものを集めるだけならば、これほど便利なことはないだろう。

Hiromichi_s34 梱包を解いて出てきた弘道さんのこけしは、期待に違わず実に「爽やかな微笑」を湛えていた。胴底には「昭和三十四年六月一日」と製作日の記入がある。「木の花」掲載品は7月作となっているので、それよりは少し前であるがほぼ同時期の作と考えて良いだろう。早速、33年作(10月)と比べて見る。胴の形態は殆ど変わらないが、頭の形、特に頭頂部が角張っているのが分る。そして目の描彩であるが、太い筆致で描かれた描方に違いは見られないが、33年作はやや目尻が下がっているのに対して、34年作は目頭と目尻がほぼ平行に近い。また上瞼と下瞼の間隔は33年作の方がやや大きく、目尻にかけて膨らんでいる。そして、眼点は33年作は楕円状に入れているのに対して、34年作は筆を顔の内側から外側に打ち込むように描いているので、筆入れ部分が分る。弘道さんにしてみれば意識して描いていた訳でもないのであろうが、このような目の描彩の僅かな違いからでも、見る方からしてみると受ける印象はかなり違ってくるのである。

Hiromichi_s34_hikaku_1 手元にある別の34年作(11月)と比べて見る。この11月作では、胴が太めになって、太治郎型特有のエンタシスの形態が既に変化しているのが分かる。そして何と言っても顔の描彩が変わってしまった。両目の間隔が狭まってしまい、上瞼と下瞼の間隔は逆に広がっている。そして鼻が小さくなったことも相俟って、あの独特の大らかでゆったりとした「弘道の微笑み」は既に見られなくなっている。

こう見てくると、太治郎の再現と騒がれた初期弘道こけしは33年6月頃から34年の半ば頃までの約1年間の作に限定されると言えるだろう。この間にも前述したような描彩上の些細な変化は認められるが、概ね太治郎の体質を色濃く受け継いだこけしに仕上がっている。その後の弘道さんのこけしの変化は相当に激しい。33年~34年の初期ピークからかなり急激に味わいが無くなり、42年には別趣の太治郎型で第2のピークを迎えるが、それからは徐々に充実度が薄くなり、そして51年頃からは太治郎型をベースにした弘道本人型に移行していくのである。「木の花」で矢田氏がいみじくも指摘しているように、初期弘道こけしの「微笑み」はまさに貴重なものと言えるだろう。

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