第19夜:正吾さんの武蔵写し(1)
古品7点(高橋武蔵、盛秀太郎、照井音治、秋山忠、佐藤松之進、佐藤文六、佐藤春二)の入札では、運良く武蔵5寸(S12,3年頃?)を入手することが出来た。今年になってからは正月の「ひやね」入札で入手した武蔵尺(S15)に続いて2本目の武蔵古作である。この2本を一昨日(30日)、高橋正吾さんに送付し確認をお願いしている。
昨年来、正吾さんには武蔵古作(戦前作)の写しを何本かお願いしており、それらを順次紹介していきたいと思う。まず最初は、このブログでも以前に書いているが、昨年のネットオークションで古品が大量に出品された時に入手した尺2寸(S15)である(第12夜参照)。保存が良いのと珍しい胴模様が特徴的なこけしである。昭和15年というと武蔵さんの戦前作では末期にあたり、黄胴に赤ロクロ線という様式が定番である。本こけしはロクロ線は肩の山、胴上下とも赤のみであるが、胴は白胴になっており、胴模様の菊の花芯に黄色が塗られているのが分かる。この様式は黄胴から白胴に変わる移行期ものであることは、正吾さんからの聞き書きとして前に述べた通りである。
さて、正吾さんにはこのような背景から「原」と同じ白胴と黄胴の2種類で作って頂いた。いずれの作も武蔵戦前末期の作風を見事に再現したこけしとなっている。左の黄胴に赤ロクロ線は正吾さんの他の復元作でも良く目にする様式、一方右の白胴は花芯の黄色も効いて新鮮な感じを受ける。このこけしのもう一つの特徴である胴下部の1対の横菊であるが、菱菊模様を描いたものの中央の正面菊と赤い地面との間に隙間が出来てしまい、それを埋めるために加えたのではないかとのこと。尺2寸という大寸ものなので小さな横菊を描いたらしい。ちなみに童宝舎の「コレクション図集(その四)」には同時期の菱菊模様の8寸が載っているが、こちらでは横菊は無く、替わりに4葉の葉が描かれている。戦前の作品は残っているものが少ないにも拘わらず、形態・描彩とも実に多種多様である。木地にしろ描彩にしろ、今のように規格に捕らわれることなく自由に作ることが出来た時代の産物なのであろうか。
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