第20夜:正吾さんの武蔵写し(2)
もちろん痴娯の家のこけしが出品されるとは思えないので別物と考えられる。手持ちの復元作を取り出して比べると大きさ、木地形態、ロクロ線の配色、面描、胴模様などうり二つである。ちょうど正吾さんの武蔵型を纏めていた時でもあり、頑張って何とか入手した。やや胴長で直線的な胴の下部には鉋溝が一本通っており、肩の山は胴上部から大きく高く盛り上がっている。やや角張り気味の大きめな頭に4筆描きの横鬢、その鬢の下端辺りから可憐な瞳が描かれている。胴模様は大きな三段の重ね菊で下部は緑の地面になっている。昭和10年頃の作と思しき武蔵こけしである。正吾作「痴娯の家武蔵」との違いは、本作の方が胴がやや細く、頭がやや角張っているくらいで、この点は正吾さんも指摘されていた。
既に痴娯の家武蔵という同種のこけしを作っている正吾さんであるが、それから8年くらい経っており、改めて本作の写しをお願いした。正吾さんの写しは昨年11月作。細身の胴と角張り気味の頭に気を遣っているが、頭頂部は「原」こけしほどは平らになっていない。やはり普段作り慣れている形態を極端に変えるのは無意識のうちに出来ないのであろう。その分頭が「原」よりも縦長となり、面描も前髪と眉の間が広くなって、おでこの広い武蔵昭和1桁台の表情に近いこけしになっている。今回、痴娯の家武蔵と同種のこけしが見つかったことから、この様式が昭和10年頃の武蔵こけしの典型的なものと言えるのだろう。
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