第31夜:佐志馬のこけし(2)
このこけし、良く観察すると前回のこけしと同じ様式なのが見て取れる。しかし受ける印象はかなり異なる。頭は他の多くの佐志馬こけしと同様に縦に長いが、顔の造作の殆どは下半分にこじんまりと収まっている。眉の太さも均一で細い線描きの瞼も単調になり、瞳も上下の瞼内に収まっている。ただ横鬢は短くなったが勢いがあり、その間から覗く視線は上目遣いにこちらを凝視している。その瞳にはまだ人を引きつける力が残っているようだ。胴は太めで、頭が小さいために首の部分が細くなって、ちょっとトックリを思わせる形態である。胴のロクロ模様は、中央を3本の紫帯で締めるのは同じであるが、最下部の黒ロクロ帯の上に紫帯が1本追加された。上半身も紫の細線の束の下に赤の細線の束が入っている。
このこけしも近野さんに写しを作って貰った。作り初めのためか3本作って貰ったが出来に差がある。最も雰囲気の近いものを「原」と並べて写真に撮った。胴が短めであるが木地形態は近い雰囲気である。それに比べると表情はいま一つである。このこけしの特徴であり見所でもある「ちまちまとした下目」になっていないのである。写しを作って貰う時によく聞く話であるが、普段作っているこけしの描彩(特に面描)を大きく変えるのは、なかなか難しいそうである。
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