第35夜:子持ちえじこ(2)
今夜も笹森さんの話である。地梨の会発行の「地梨第四十三号」に笹森淳一さんの『お楽しみだるま』が載っていた。蓋付だるまの入れ物に2寸の各種こけし30本がきちんと収まるようになっている。こけしは全て違う物で実に愛らしい。幸兵衛型こけしに専念している私は、幸兵衛型のこけしでこのようなものが作れないものかと考えていた。昨年(平成18年)の5月、JR東日本から期間限定の格安切符が発売されたのを機会に津軽の工人を巡る旅を計画した。その中で再び笹森さんを訪問し、依頼していたこけしを受け取るとともに、幸兵衛型での蓋付き入れ物の件を話してみた。色々と話し合う中で、入れ物は前回と同じくえじことすること、中に入れるこけしは同じ大きさの幸兵衛型で、出来るだけ沢山入れて貰うことで話が着き、その製作をお願いした。
待ちに待った子持ちえじこが届いたのは、8月になってからであった。径13cm、高さ17cmの親えじこは胴部前面には達磨絵を背面には牡丹絵をあしらったものであり、おかっぱ頭の付いた蓋部は二段構成で赤と紫のロクロ線で締めている。おかっぱ頭の頭頂部には赤い中剃りがあって愛らしい。相変わらずの素晴らしい出来栄えであるが、それで驚くのは早計であった。蓋を開けて見て、私は思わず唖然としてしまった。大きさ2寸2分のこけしが何と25本(1本のみ2寸)と立ち達磨1個が中央の小えじこの周りに整然と立ち並んでいたのである。こけしの模様は達磨絵8本、牡丹絵10本、ロクロ線7本である。小さいながらもそれぞれに木地形態や胴模様、表情にに違いが見られ、幸兵衛の原こけしを元に作られたのが分かる。達磨絵の1本は木村弦三コレクションの幸兵衛の如く達磨絵が横向きに描かれている。以前に小寸こけしの項で、小寸こけしには元々の小寸こけしと大寸こけしのミニチュアがあると書いたが、この2寸2分こけしは正にミニチュアの見本ようなものである。ミニチュアは小さいながらも一目でそれと分かる特徴を備えていなければならない。同じ胴模様でもロクロ線、牡丹、達磨の順で手間がかかる。特に面倒な達磨絵をこんなに小さく、しかも一切の手抜き無しで8本も描いてくれた笹森さんの好意に頭が下がる。電話で笹森さんに驚きと喜びを伝えると、幸兵衛型は胴が細いので思っていた以上に本数が入ったとのこと。笹森さんの木地技術と描彩力に感服した次第である。
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