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第37夜:つどいの頒布(1)

「つどい」の話を続ける。中目黒の「つどい」では、私が良く通った平成3年頃、何人かの工人の新作に力を入れていた。木地山系の北山賢一さんもその中の一人であった。賢一さんは師匠の阿部平四郎さんが作っている小椋泰一郎型や米吉型を引き継ぐだけでなく精力的にその他の型にも挑戦していた。平成3年の9月下旬につどいを訪ねると、ご主人から賢一さんの新作というこけしを見せられた。それは9本のこけしと1個のえじこで、今まで賢一さんが作っていたどの型とも異なり、賢一さんの意欲と工夫が感じられるこけしであった。

Kenichi_h3new_kiku 写真(1)の4本のこけしとえじこ1個は伝統的な菊模様を描いているが、面描、胴模様とも実にあっさりと描いている。それがこけし本来の素朴さ、可憐さを表していて実に好ましい。なお、えじこの背面には紫の蝶が飛んでいる。

Kenichi_h3new_kakusyu_1 写真(2)の5本は新しい胴模様への挑戦なのであろう。右からグラジオラス(6寸3分)、木蓮(6寸7分)、フリージア(5寸)、つゆくさ(4寸1分)、シクラメン(4寸1分)。こちらも描彩は素朴で、それぞれの草花を賢一さんの感性で大胆に省略して表現している。これがあどけない表情と実に良くマッチして独特の世界を作り出している。

Kenichi_h3new_henka さて、これらの新作がその後どうなったかは興味の湧くところであるが、つどいでも見かけることは殆どなかった。その年の12月になって、えじことグラジオラスにそれと思しき作品が見られたので比較してみた。写真はいずれも、右が9月の初作で左が12月の作。ともに洗練されており、試作品と量産品という位置づけになるのであろうか。12月作では洗練された分、初作に見られた素朴さ、簡素さは見られなくなってしまった。これを見ていると9月の初作が如何に貴重なものであるかが分かる。初作収集の醍醐味なのかも知れない。

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