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第62夜:「美と系譜」のこけし(5)

Zenji_kobei_s40_kao 昨夜は「こけし・美と系譜」に掲載されている佐藤善二さんの幸兵衛写しのこけし(8寸)について見てみたが、今夜はもう1本の幸兵衛写し(6寸)の方を見てみたい。このこけしも写しとして紹介されているので何らかの「原」があるものと思われるが、私には残念ながら未だ特定出来ていない。幸兵衛型の秀作であることは間違いない。

Zenji_kobei_s40 「系譜」に掲載されているこけしは昭和40年1月作と記されている。顔の表情から見ると、西田コレクションや「木の花(拾号)」に載っている鹿間氏蔵品が思い浮かぶが、大きさが違うし胴模様も同じではない。この胴模様は昨夜の幸兵衛写しの胴模様が変化したものと考えられなくもない。このこけしの「原」がどれなのか私には特定出来ていない。頭はやや丸みを帯びており髷も小振りである。眉の筆致太く、目尻の釣りがった瞳は視線鋭く、凝視度は強い。さて本稿掲載写真のこけしは、「系譜」作と比べて頭がやや縦長で髷も大きめである。面描はほぼ同じであるが、口元は「系譜」作よりも昨夜の幸兵衛写しに近い。そのように見てみると、本稿のこけしの方が系譜」作よりも古い作なのかも知れない。

Zenji_kobei_s40_hikaku 写真3の左も同型の幸兵衛型であるが、こちらは頭が横にふっくらして髷も小さくなっている。目の位置が下がり、眉目の筆致も細くなって表情はぐっと軟らかくなっている。口の描方は「系譜」作に近い。胴模様では牡丹の緑の花芯が3つに増えている。また牡丹の周りの添え葉が全体的に大きくなり、特に上部の葉は完全に立ち上がっている。この表情の幸兵衛型は余り多くはないようで、昭和40年代の中頃以降は殆ど見かけない。

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