第59夜:「美と系譜」のこけし(3)
鳴子の桜井昭二さんは昭和2年の生まれ。昭和20年より中山平の大沼岩蔵の弟子として2年間木地修行を行い、鳴子に戻ってからはこけしの製作も始めた。こけしは岩蔵型が中心であるが庄司永吉型は昭和35年より復元している。「美と系譜」掲載の永吉型はその35年作と記されている。本稿掲載のこけしは胴底に「1960-8-5」との記入があり、永吉型復元初期のこけしである。このこけしを「美と系譜」の永吉型と比べると、胴はそれ程太くなく均整が取れている、前髪上に描かれる赤い水引があまり極端に前方に垂れていない、表情に初々しさが見られるなどの点から、「美と系譜」よりも古く、永吉型の極く初期の作ではないかと考えられる。このこけしは左眉に赤い染料が付着しており、普通ならかなり気になるところであるが、あまり気にかからない。それを補うほどの魅力を持ったこけしなのである。それは保存状態が非常に良く、退色は無く、木地の焼けやシミ、古色も全く付いていないからかも知れない。鹿間氏が「こけし鑑賞」の中で絶賛した『白いもち肌』そのものなのである。
写真3の左は「美と系譜」とほぼ同時期と思われる永吉型。こちらも退色はないがやや古色が付いているので『もち肌』は望むべくもない。それだけに右のこけしは貴重である。表情は殆ど変わらないが、水引の描法の違いは明かである。なお、この永吉型初期作は、胴底の署名が『昭二作』となっており、特に『作』の字の『乍』の縦線が右に大きく跳ねているのが特徴である。
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