第75夜:小寸こけしの魅力(3)
写真2の2本は大きさが2寸前後で昭和62年頃の作。左(大)は肩が張った地蔵型で胴裾にかけてすぼまっており、底部は薄い台状に広がっている。胴模様は赤と緑の返しロクロ。湊屋系の粂松や虎吉に同じような地蔵型が見受けられる。頭には傘を被っており、表情はちょっとニヒルな由吉を連想させる。一方、右(小)は胴の中ほどに段があるマント型で台状の胴底は左のこけしと同じ。胴模様は赤を基調としたロクロ線である。こちらの頭には帽子を被っており、表情はつぶし目の浅之助型である。この2本、どちらも梨材を使ったもので小さいながらも完成度は高い。こういった小寸は1本よりも2本ペアで並べた方が面白みが倍加する。
それから一月ほどして再び、野地さんの小寸ペアが出品された。大きさは2寸5分と前のこけしよりはやや大きめ。胴底に「S63」の書き込みがある。左は坊主の地蔵型。写真2左よりは肩の張りが少なく底の台部も厚みがある。胴模様は湊屋伝来のロクロ線で上部はギザギザ模様、下部は返しロクロに花を散らしている。顔はやはりニヒルな由吉。一方右は、写真2右と同じくマントに帽子であるが、高さがある分スマートになっている。顔は浅之助。こちらもペアで見た方が楽しい。野地さんの小寸こけしは幾らでも欲しくなるような愛らしいこけしである。
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