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第86夜:7月の友の会(2)

Toru_h1907reikai_kao このブログでは、東京こけし友の会の例会に出品された主な入札こけしを紹介しているが、友の会では中古や古品はかりでなく、新品のこけしも頒布している。例会への出席者はベテラン揃いということもあって、新品こけしの売れ行きははかばかしくなく、頒布担当の幹事さんはいつも頭を悩ませることになる。皆が欲しがる一部の人気工人のこけしは会でも簡単に入手出来る訳ではないからである。そんな中にあって、土湯系の高橋通・順子ご夫妻のこけしは、お二人のご協力もあって年に数回は頒布されている。7月に頒布された通さんの新作は特に素晴らしい出来であり、私も1本入手出来たので、今夜はそれを紹介したい。

Toru_h1907reikai 私は通さんのこけしを集中的に集めている訳ではないので、友の会の即売に出ても毎回入手する訳でもなく、ここ2,3年はあまり入手していなかった。ところが、今回の出品作を見て、これはぜひ1本欲しいと思ったのである。通さんは鯖湖のこけしをベースにして、あくまでも伝統こけしという範疇の中で色々な作品に挑戦している。そんな中に1年間毎月の胴模様に季節の花をあしらった「草花シリーズ(?)」があるとのこと。今回のこけしはその中の1本だと言う。通さんは、このシリーズにある種の拘りを持っているらしく、一般のこけしとは違う観点で作っていることが伺われる。本作も材料には特別な木材(オノオレ:斧が折れるほど硬い)を使っており、磨きこまれた表面は大理石のように光沢があり、木目が見事に表れている。胴模様は、夏の草花のヤナギランが一面に描かれており、横広がりの頭に三角胴の均整の取れた形態が美しい。そして、顔の表情がまた素晴らしい。ぼってり描かれた前髪と両横鬢、そして整った鯨目は集中度が強く視線をそらせない。粗末な木地に滲んだ胴模様、アンバランスな表情に素朴さと懐かしさを感じる昔のこけしとは一線を画している。これがまさに近代感覚で作られた現代のこけしと言えるものなのだろう。10本限定という意味だろうか、胴底には1本1本に「x/10」(10本中のx番目)と通さんの手でナンバーが書き込まれている。

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