第81夜:小寸こけしの魅力(5)
土湯系、飯坂の渡辺喜平さんは明治43年の生まれ。大正10年12歳の時に山根屋渡辺角治の養子となり、鯖湖こけしを継ぐことになった。私の手元には喜平さんの戦後の3寸こけしが1本あったが、それは既に形式化した表情の楷書体のものであった(写真2の左)。喜平さんは戦前の一時期、きんこけしの木地を挽いており、その当時(昭和16年から17年頃)描彩したこけしが戦前作として知られている。頭は横広の平頭で胴は太く、面描では「ぞう鼻」と呼ばれる特徴的な鼻と情味のあるおおらかな瞳が印象的である。本稿のこけしは小寸ながら、その特徴を良く表している。一緒に並べた戦後作と比べて見ると、その作行の差は歴然であり、どうしてこのように変化してしまったのか不思議である。今回の2本は比較のために並べたものであって、鑑賞上からのペアではないのを断っておきたい。
| 固定リンク
「土湯系」カテゴリの記事
- 第990夜:「日本の郷土玩具」展(2015.01.10)
- 第988夜:二代目虎吉のこけし(2015.01.05)
- 第984夜:初期作の味わい(勝英)(2014.12.21)
- 第983夜:42年の弘道こけし(2014.12.19)
- 第981夜:友の会12月例会(H26年)(2014.12.14)
コメント