第85夜:岡崎長次郎のこけし
『こけし辞典』によれば、蔵王(高湯)系の岡崎長次郎は明治11年の生まれ。明治27年より我妻勝之助について木地を修業したが、翌28年には蔵王に来た佐藤直助にも師事し、明治31年には直助の帰郷に伴い遠刈田まで出掛けて木地技術を磨いたという。明治35年頃に蔵王に戻り、岡崎代助の養女と結婚して婿養子となった。長次郎のこけしは、昭和5年に休止するまでの前期、昭和15年から19年までの中期、戦後の後期の3期に分けられる。
さて、今回のこけしは胴裏に65歳という署名があり、昭和17年から18年頃、すなわち長次郎が盛んにこけしを作った中期の作ということになる。ぼってりとした桜崩しを描いた太い胴には定番の涎掛けがあり、おかっぱ頭にあどけない表情など、典型的な中期の特徴を備えたこけしである。向かって左側の頭髪が下まで伸びているためか、左の横鬢が右の横鬢に比べるとかなり下方に描かれていてアンバランスなのだが、面描の中に不思議と調和している。中でも太い眉と独特の味わいを醸し出すあどけない瞳が長次郎こけしの魅力の原点ではなかろうか。左の横鬢には縦にヒビが入っているのだが、そんなことを超越してしまうほどの魅力がこのこけしからは感じれれる。
数年前に、「梅木修一の岡長こけし」という小冊子を作り、修一さんの復元こけしを通して長次郎のこけしを思い描いていたが、長次郎の現物に接する機会はなく、写真等で想像するしかなかった。最近は古品の価格が下がってきて、安サラリーマンの私でも何とか手の届く所になってきたが、そう多くを入手出来る訳ではない。従って私の入手する古品は、今まで集中して集めてきたこけしの原点にあたるものに一応限定している。太治郎、正吉、武蔵、盛などがその例である。そんなことから、今回の長次郎もちょっと大き過ぎるという感じもしたが、これだけの表情の長次郎こけしを入手する機会は少ないと考え、入札に参加した次第である。
| 固定リンク
「蔵王系」カテゴリの記事
- ★小林清次郎さん、会田栄治さん逝去さる!(2015.03.17)
- 第989夜:新春こけし展(梅木直美)(2015.01.08)
- 第986夜:伊東東雄と栄治郎型こけし(2014.12.30)
- 第977夜:荒井金七の小寸こけし(2014.12.02)
- 第970夜:定番のこけし(秋山一雄)(2014.10.12)
「古品」カテゴリの記事
- <番外>こけし談話会(2015.05.11)
- 第1000夜:ステッキこけし(小関幸雄)(2015.04.19)
- 第999夜:極美古品(伊豆定雄)(2015.04.13)
- 第998夜:佐藤慶治のこけし(H27花見)(2015.04.01)
- 第997夜:鶴松のこけし(2015.03.28)
「オークション」カテゴリの記事
- 第969夜:ヤフオクの極美古作(第2弾)(2014.10.11)
- 第966夜:日本こけし館の入札品(2014.09.24)
- 第845夜:ヤフオクの古品入札(2013.07.30)
- 第653夜:新春纏めて古品(2012.01.18)
- 第629夜:友の会12月例会(H23)(2011.12.11)
コメント