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第85夜:岡崎長次郎のこけし

Cyojiro_65sai_kao 最近の東京こけし友の会の例会では古品の入札があるので、まずは入札品の棚に目が行く。22日の7月例会に出かけてみると、この棚の中にボリューム感に溢れる1本のこけしが立っていた。そのこけしは並み居る古品こけしの中でも抜群の存在感を示しており、特にその表情の素晴らしさに一瞬にして魅せられてしまった。それは蔵王系の岡崎長次郎のこけしで、これほどインパクトのある長次郎の現物を手で触って直に見たのは初めてであった。今夜は縁あって私の手元に落ち着くことになった、この長次郎こけしを眺めてみたい。

Cyojiro_65sai 『こけし辞典』によれば、蔵王(高湯)系の岡崎長次郎は明治11年の生まれ。明治27年より我妻勝之助について木地を修業したが、翌28年には蔵王に来た佐藤直助にも師事し、明治31年には直助の帰郷に伴い遠刈田まで出掛けて木地技術を磨いたという。明治35年頃に蔵王に戻り、岡崎代助の養女と結婚して婿養子となった。長次郎のこけしは、昭和5年に休止するまでの前期、昭和15年から19年までの中期、戦後の後期の3期に分けられる。

さて、今回のこけしは胴裏に65歳という署名があり、昭和17年から18年頃、すなわち長次郎が盛んにこけしを作った中期の作ということになる。ぼってりとした桜崩しを描いた太い胴には定番の涎掛けがあり、おかっぱ頭にあどけない表情など、典型的な中期の特徴を備えたこけしである。向かって左側の頭髪が下まで伸びているためか、左の横鬢が右の横鬢に比べるとかなり下方に描かれていてアンバランスなのだが、面描の中に不思議と調和している。中でも太い眉と独特の味わいを醸し出すあどけない瞳が長次郎こけしの魅力の原点ではなかろうか。左の横鬢には縦にヒビが入っているのだが、そんなことを超越してしまうほどの魅力がこのこけしからは感じれれる。

数年前に、「梅木修一の岡長こけし」という小冊子を作り、修一さんの復元こけしを通して長次郎のこけしを思い描いていたが、長次郎の現物に接する機会はなく、写真等で想像するしかなかった。最近は古品の価格が下がってきて、安サラリーマンの私でも何とか手の届く所になってきたが、そう多くを入手出来る訳ではない。従って私の入手する古品は、今まで集中して集めてきたこけしの原点にあたるものに一応限定している。太治郎、正吉、武蔵、盛などがその例である。そんなことから、今回の長次郎もちょっと大き過ぎるという感じもしたが、これだけの表情の長次郎こけしを入手する機会は少ないと考え、入札に参加した次第である。

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