第89夜:記念こけし(2)
鹿間時夫氏が作者不明の古品こけしを遠刈田、青根の古老に見せて、それが小原直治のこけしだとの結論に達したのは昭和33年のことで、その経緯は『こけし手帖(21号)』に詳しい。鹿間氏はまた著書『こけし鑑賞』の中で、『這子の話』第1図版右2本のこけしも直治作ではないかと推測している。
本こけしは中古として入手したものであるが、全く同型のこけしは以前に入手していた。このこけしの胴裏には『古名品展記念 五十三.六.四』の署名がある。『古名品展』とは昭和53年4月29日から6月4日まで、神奈川県立博物館で開催された「こけしの会」主催による展示会で東西の古品350本が展示された。本こけしはその記念として作られたということであろうが、「原」こけしが古名品展に出品されたとの記録はないので、どういう経緯でこの「写し」が作られたかは不明である。第14夜で書いた「信雄さん訪問」では、自宅の店先に顔の描彩がこの形式のこけしとえじこが見本として置いてあったが、その時はこの写しに関する話を聞いた覚えはない。
原こけしは大きさは7寸のこげす型で、独特の鬢飾りと垂れ鼻、墨の入った紅口など古い様式を色濃く残した名品である。この時点(昭和53年)で 既に直治型をすっかり自分のものにしていた信雄さんに「写し」の依頼があったのは当然のことで、信雄さんはこのこけしも切れ味鋭い見事な筆致で現代風に再現している。その後、高橋五郎氏の探求により、この古こけしは佐藤治平の作と訂正される。そんな事情もあってか、やがて信雄さんはこの様式の直治型は作らなくなってしまった。
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