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第90夜:記念こけし(3)

Teturo_naoji_kogesu_kao_2 前回取り上げた『這子』の古こけし(鹿間氏が直治作かと推測していた)は高橋五郎氏により佐藤治平のこけしということに落ち着いた。そのことにより、我妻信雄さんはこのこけしの写しを作らなくなり、継承するものはいないと思っていたところ、中古で本こけしを入手することが出来た。独特の形態と描彩から、一目で『這子治平』の写しであることは分った。胴底の署名から作ったのは佐藤哲郎さんであった。

Teturo_naoji_kogesu 本こけしには胴底に署名のほか『図譜・こけし這子の世界 出版記念』の印が押されている。『図譜・こけし這子の世界』は高橋五郎氏の著書で昭和60年6月に発刊されものである。その折に発刊記念として10本程度の記念こけしが作られたようである。「ひやね」の店頭に纏めて出品されていた記憶がある。本こけしはその後に「ひやね」で購入したものであり、その中の1本ということになる。『這子』にはこのこけしの「原」こけしが掲載されており、記念こけしは掲載されたこけしの中から選ばれた写しだったのであろう。昭和60年の時点では未だ信雄さんは健在であったが、直治作ではないということで哲郎さんが写しの工人として選ばれたのであろうか。

高橋五郎氏の著書『佐藤治平と新地の木地屋たち』の中で、この「原」こけしは次のように紹介されている。「このこけしは、温泉の湯気にむせたかのように、頭部の描彩の右側半分が、ぼやけてしまっている。面描の鼻は、蔵王高湯こけしに見られるような垂れ鼻で、鬢飾りは、『蔵王東麓の木地業とこけし』所載の「こけし描彩図(頭)」の第五図に該当する複雑な描き方で、古くは、周治郎が好んで描いた、といわれている。胴模様は、同書の「こけし描彩図(胴)」の第三図の梅花模様で、松竹梅をあしらったのか、胴下部や背部にまで、いっぱいの笹竹と松葉のようなものが描かれている。笹竹や松葉が遠刈田系こけしに描かれることは珍しく、他に類例をみない。青と赤で大胆に引かれた襟元は、きつい表情を一層引き締め効果的である。形態は、肩のこけた、いわゆる、こげす(こけし)型である。

Teturo_naoji_kogesu_syomei 哲郎さんの写しは、背部の笹竹や松葉まで描かれており、「原」こけしを見て作ったものと思われる。一方の信雄さんの写しはそこまで忠実ではなく、写真か何かを参考にして作られたのかも知れない。それぞれに特徴があり、優劣は付けられない。遠刈田の古こけしを偲ぶには十分の出来栄えと言って良いであろう。

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