第96夜:清次郎の「雪女」
山形系の小林吉三郎さんの次男である清次郎さんが本格的に伝統こけしに挑戦し始めたのは昭和38年のこと。吉太郎型は38年12月に川上克剛氏の依頼が最初だと言う(「こけし手帖419号」より)。この吉太郎型の出来が良かったので、川上氏は清次郎さんに吉太郎型の写しを次々に依頼する。その中に小野滉氏蔵の尺5分があった。正末昭初の作で気品があり吉太郎の名品であった。この写しは昭和40から何回も作られたが、特に昭和41年作の朴材は最高傑作と言われ、中でも目・鼻の墨が薄墨で髪の墨が濃い作は「雪女」と称された。この墨の色が異なる10本ほどのこけしが正真正銘の「雪女」であるが、一般的にはこの時期に作られた朴材のこけしが「雪女」と呼ばれて珍重されているようだ。
さて、ヤフオクに出品されたこけしは朴材と思われ、胴底には「42.2.22教室」との書き込みがあり、この41年作に近い作で広義の「雪女」と言われる作と思われる。退色もなく第1級のこけしであることに間違いはない。私も当初から目を付けていたが、流石に愛好家諸氏の目は高く思わぬ高額になってしまった。
掲載写真は「雪女」と同型同寸(イタヤ材)の吉太郎型であるが、胴底には「45.9.9 鳴子コケシ祭」の書き込みがある。中古で入手したものであるが保存状態も良く、清次郎作の中で最も気に入っているこけしである。何と言っても気品がある。この通称「雪女」の見所はこの「気品」であるが、これ以降は次第に気品が薄れて「きつさ」のみが強調されるようになる。写真(3)の中央はS47年作、左端はS49年作。表情の変化が良くわかると思う。
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