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第98夜:津軽の競作(盛美津雄)

Mituo_futudaruma_v_kao 第89夜と90夜で「這子直治」の我妻信雄さんと佐藤哲郎さんによる写しを紹介した。このようにある特定のこけしを、それを継承する何人かの工人に作って貰うのは、こけし収集の楽しみの一つでもある。昨年(H18年)の5月に弘前を訪ねる機会があり、その折、盛美津雄さん、奥瀬陽子さん、恵介さんの3人に同じこけしの写しをお願いした。元となるこけしは『盛秀一家のこけし辞典(三)』の6頁に掲載されている太胴だるま絵の2本のこけし(昭和10年頃)である。今夜はその内の盛美津雄さんのこけしを紹介する。

Mituo_futudaruma_v_r 2本のこけしの内、右側のこけしは胴裾部がアイヌの唐草模様ではなく、赤い葉のような文様が描かれた特色のあるこけしであり、美津雄さんのレパートリーにも既に入っていたものである。二重瞼の所謂「開き目」で目の周りを赤く塗っている。鼻は左右から2筆で描いている。胴中央部を黄色のロクロ帯で締め、その下に縦長のダルマ絵を描いている。美津雄作では胴裾の赤い葉模様のバックに緑のロクロ線を薄く引いて赤の鮮やかさを際だたせている。「原」の雰囲気を見事に再現している。

一方、左側のこけしはこれまで美津雄さんの作例で見たことがない。訪問時には美津雄さんが不在だったために確認することが出来なかったが、あるいは初めて作ったものかも知れない。頭部の描彩は同じであるが、こちらの木地形態は右こけしよりも更に太めでダルマ絵も横長の顔になっている。胴上部の唐草模様が紫色になっていることと、胴中央のくびれ部に赤い唐草模様が入っていることで雰囲気がかなり違っている。これも素晴らしい出来栄えである。

この2本、「原」こけしは尺であるが、本作は8寸で作ってもらった。夫々に構成力のある完成度の高い華麗なこけしであるが、この2本を並べて置くことでお互いが引き立て合って、更に見応えのあるものとなっている。

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