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第115夜:昨夜の入札

Sakari_taisyo_kao 昨夜(11/20)の締切でヤフオクに出品されていた大正期とされる盛のこけしは、やはりどうしても欲しいこけしであった。私のこけし収集の大きな柱は福寿こけしであり、それを中心とした「高勘」のこけしは私の収集品の中でも大きな比重を占めている。種類の多い高勘こけしの中でも大正型のこけしは完成度の高いこけしとされている。その原点である盛さんの大正型が市場に出てきたのは驚きでもあった。縁あって私の所に来ることになったので、今夜はその話をさせて頂きたい。

Sakari_taisyo そのこけしは全く突然ヤフオクの中に現れた。一連の古品の出品というようなものではなく、ごく普通に出品されたこけしの中の1本であった。出品者は委託品と断っているが、他の出品こけしは極普通のこけしなのである。何で、このこけしがそれらと一緒に出ていたのかは分らない。出品こけしの底には「高橋盛 昭和十五年十二月二十八日入手」との書き込みが見える。保存状態は、それなりの古色と汚れはあるものの退色は無く、赤と緑の鮮やかな色彩が残っている。そして緊張感のある二重瞼の表情が素晴らしい。

盛大正型は西田記念館の西田コレクションに1本ある。これは「原郷のこけし」では『勘治一家』と記されている。それと「古形志加々美(こけし鑑)」に1本掲載されている。この2本以外には文献等でも見かけない。そんな稀品が出てきたと言うのであろうか。新たな大正型の発見かも知れない。そんな思いを抱きながら応札状況を見守っていた。流石に有力な方々の応札があり価格は上がっていったが、35万で止まり、「新規」の入札者が最高値を付けたまま動きがなくなった。いくら欲しいとは言え、定年を間近に控えた安サラリーマンの小遣いでは簡単に捻出出来る金額ではない。こういう場合、何か自分を納得させる理由が必要である。通勤の行き帰りに大阪こけし教室の復刻版「教室だより」に目を通す。中に丹羽義一氏の『こけし随想-蒐集について(2)-』を見つけた。曰く、『蒐集は出合いである。・・・機会は逃してはならない。一期一会と心得て、清水の舞台から飛ばなければならない。・・・』。これで心は決まった。入札状況はそのまま変わらず残り10分を切っていった。他に入力者が現れそうもなく、遂にここで入札に参戦した。現在価格にある程度の上乗せをしたが、「新規」者の価格を上回らない。そこから暫くは価格を上げながら応札を繰り返したが「新規」者の壁は厚い。ここは大台を上回る必要があると感じて大台にプラスアルファして入札し、ようやく最高値を獲得出来た。通常だとここから延長時間での競り合いとなるのだが、他に応札は無く、そのまま落札となった。決死の意気込みに肩透かしを食ったようなあっけない幕切れではあった。

落札後、「こけし鑑」に掲載されている大正型盛のこけしと比べて見ると実に良く似ているではないか。鑑の写真がコピーのためにズレがあるのだが、特徴のある赤いロクロ線の形式は全く同じだし、2輪の正面菊のくねった花弁も本数と形がほぼ一致している。鑑の現品でないにしても同時期に作られたものであることは間違いないと思う。落札こけしが届いたら、改めて詳細を報告したい。

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コメント

西田記念館の盛大正型と『こけし鑑』の盛大正型は同一品と思いますので、新たな発見品と考えます。詳細な報告を楽しみにしています。

投稿: 木童舎 | 2007年11月23日 (金) 10時21分

先ほどこけしが届きました。西田記念館と「こけし鑑」の大正型は肩のロクロ線と中央部の添え葉の様式が違うようです。本こけしは「こけし鑑(原色版)」の現物に間違いないと思います。

投稿: 筆者 | 2007年11月23日 (金) 12時50分

『こけし鑑』のカラー判ではなく、白黒判の写真にも盛大正型が掲載されています。この白黒判を見て西田記念館のものであると思たのですが、今回のがカラー版であるとすれば、いつか西田記念館において2本並んだ展示が見たいものです。(カラー版にも盛大正型同手が掲載されているのを見落としていました。)『鑑』のメンバーも今回のカラー版をより貴重と考えていたようですが、盛大正型同手が2本『鑑』に掲載されていたとは、今まで認識していませんでした。

投稿: 木童舎 | 2007年11月23日 (金) 14時25分

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