第113夜:津軽の競作2(恵介)
聞いたところによると、恵介さんは開き目があまり得意でないようで、色々考えた末に「盛秀一家のこけし辞典(三)」の15頁に載っている盛秀こけし(S40年代後半)を参考にして作ってくれた。この顔をした型は初めてということで、胴底には「初」という書き込みもある。開き目での競作を期待していた私にとっては意外なことになったが、これはこれでまた何とも味わいのあるこけしに仕上がっているではないか。恵介さんは、鉄則さんや陽子さんが作る華麗な盛秀型ではなく、素朴で泥臭い津軽こけしの源流を追求しているようだ。このこけしもその範疇に入るものであろう。胴の括れ部の形態などは恵介さんが一番、盛秀に近いようだ。また胴のロクロ線は配色の構成や線の太さなど参考にした「原」こけしと全く同一である。原こけしでは口に紅を塗っているが、本作は意識したものかどうかは分からないが紅は塗られていない。その分、精悍な表情となっている。下瞼から頬にかけて塗られた頬紅が効果的でもある。写真3に、4人の古形ロクロを並べてみた。それぞれの工人の個性が表れて楽しい競作となった。
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