第117夜:盛大正型考(1)
さて、昨夜は盛大正型が少なくとも2本存在することを話したが、あの独特な正面菊の胴模様はもう1本ある。「こけし古作図譜」の238<古鳴子>8寸4分(橘旧蔵)である。
写真は左から、①今回入手の盛大正型、②西田記念館のこけし、③古作図譜のこけしである。この内、西田記念館のこけしは「原郷のこけし群」では<高橋勘治一家>と記載されていて盛作とは特定されていない。この3本のこけしを比べてみると、似ているところ、異なるところが幾つかある。先ず木地形態では、③は胴の中反りが少なく直線的なのに対し、①と②は胴裾にかけての広がりが大きい。肩の山は3本とも大きいが、②はややもっこりとしている。頭は頭頂部が平たい蕪型で3本ともほぼ同形である。次に、胴と肩の山のロクロ線であるが、3本ともロクロ線は赤のみで、胴下部は太いロクロ線の上に細線が2本で同じ。肩部については、①は胴上部から丸く段になった部分、さらに肩の山までを太めのロクロ線で塗っている。②は胴上部のロクロ線の幅が広く、肩の山のロクロ線とは繋がっていない。③は②と同様であるが胴上部のロクロ線の幅は①同様に細い。また①と②は胴上部の細いロクロ線は2本であるが③は1本のみ。肩の山のロクロ線も③は細線が3本、②は太線の上に細線1本であるのに対して、①は下から細線2本、太線1本、細線1本の構成となっている、すなわち3者3用なのである。一方、胴の躍動感に溢れる正面菊はその筆法から同一手と言って良いだろう。但し、添え葉は②と③は同様であるが、①は中央の添え葉が左右2葉ずつのペアとなっている。最後に頭部の描彩であるが、これは③のみ髷を描いている。②は不明であるが、①は3筆の赤い手絡で真ん中の1本が長く前後にくねっている。横鬢は3者とも同じと思える。面描は大きな眉に二側目、一筆の丸鼻に一筆の小さい紅口である。表情は①と②は張りのある鋭いものであるが、③はややあどけなさを残した穏やかなものである。さて、これらのことから、この3本のこけしの製作年代や製作順などを考察してみたいものである。
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