第116夜:もう1本の盛大正型
盛大正型というと西田記念館にあるこけしが頭に浮かぶ。と言うか一般的にはそれが唯一の大正型だと思っている方が殆どではないだろうか。私も長い間そう思っていたが、福寿さんの初期の大正型(昭和44年作)に胴模様の葉の形式が異なるものがあり疑問に思っていた。何年か前に友人から「こけし鑑(原色版)」のコピーを貰って中を見てみると、あの福寿さんが描いていた胴模様と同形式の大正型が載っていた。その時は、こういう大正型もあるのかという程度に考えていた。盛大正型は西田コレクションによってその存在は知られていたが、数がないため殆ど語られることもなく今日まで来たのである。
落札後、「こけし鑑(原色版)」を見て、このこけしがそれに似ていると書いたところ、「こけし鑑」の大正型と西田記念館の大正型は同じものであるとのコメントを頂いた。「こけし辞典」の遊佐福寿の大正型復元の項でも『盛古型(大正型)は、昭和43年秋から作り始めた。<加々美(鑑)><美(こけしの美)>で有名な西田峯吉氏の大正期盛を復元したもの・・・』と記載されており、大正型と言えば西田コレクションのものと認識されていたのである。
私の手元にある「こけし鑑(原色版)」を見ると西田記念館の大正型とは明らかに別物と分かる。そこで「こけし鑑(原色版)」の高橋盛の項の解説をよく読むと、『ここに示したものは大正末期の作と推定されるもので、単色版の中にも同巧のものを示したが、彼の製品中では初期の雅味を見せて居る』とある。すなわち盛大正型は「こけし鑑」を発行した時点では2本あったということなのである。「こけし鑑」の著者は『菊楓會同人』の土橋慶三、溝口三郎、西田峯吉、金森遵の4氏であり、盛大正型の1本はその後、西田氏の所有となったのであろう。原色版に載ったことからも明らかなように、当時はこちらの大正型の方が評価は高かったのであろう。その後、西田コレクションの大正型は西田氏により広く紹介されたが、もう1本の大正型はその存在自体すら忘れ去られてしまったのではないか。そんな不遇を囲った名品こけしが、他の方に落札されずに私の所にやって来たのである。私にとっては運命的な出会いと言っても過言ではないのである。
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