第110夜:こけし談話会(たこ坊主)2
10数本にのぼるこの時期の善吉型を見てみると、確かに前髪の離れたものとくっ付いたものに2分されるのが解る。そこでその分かれ目の時期を検証してみた。胴底の書き込みなどを手掛かりにして年代を絞ってみる。写真2の左のこけしには「32.1.28」の書き込みがあり、右のこけしには「1958.10.25」の書き込みがあった。従って、この型を作り始めた31年から32年頃までは蛇の目と前髪が緑のロクロ線で分断されているが、33年頃から後の作では蛇の目と前髪がくっ付いていることがほぼ確認出来た。芳蔵さんの善吉型の中で、蛇の目と前髪が離れているこけしは初期の作であるということが解ったのは今回の談話会の大きな成果であった。
もう1つ明らかになったことがある。写真3の中央3本のこけし(大きさは尺)を見て頂きたい。右の1本は荒川洋一さんの作で昭和47年10月に土湯の旭写真館で入手したもの、胴底には洋一さんの自筆で「芳蔵弟子 荒川洋一」の署名がある。そして左の2本は芳蔵さんの署名があるこけし。胴の描彩には多少の違いが見られるが、面描は鼻の大きさに違いがあるが同一と言って良いほど酷似している。洋一さんが芳蔵さんのこけしを如何に忠実に写していたかが解る。ただ、晩年の芳蔵こけしの描彩は真筆かどうか疑わしいものもあり、これらのこけしを見ると洋一さんなど弟子の筆が入っていることは十分に考えられるだろう。
途中で中座してしまったために、他の工人のたこ坊主の検討には加われなかった。写真のみ掲載しておく。
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