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第121夜:正一再考

Syoichi_tajiro_s25kao 先週届いた佐藤正一さんのこけしをじっくりと眺める。尺3寸弱の大物である。この大きさは現在の私の収集領域からは外れている。でも、それでも欲しかったこけしである。太治郎型にしては膨らみが少なく直線的な胴、かなり角張った頭に綺麗に揃えられた劉海髪の前髪。そして左右に開いた大きな瞳はおおらかで優しい笑顔を見せている。太治郎型ではあるが太治郎とは明らかに違った雰囲気のこけしである。今夜はそんな正一こけしをゆっくりと味わってみたい。

Syoichi_tajiro_s25 土湯系の佐藤正一さんは斉藤太治郎の娘婿であり、太治郎が一代で創り上げた独創的な太治郎型こけしを孫の弘道さんに伝えた工人として知られている。自身が作るこけしも太治郎を継承したものであり、その数が多くないこともあってか今直、根強い人気を持っている。ところで、そのこけしの評価はと言うと、人気ほどには高くないのではないかと思われる。正一さんと正一さんのこけしを単独で取り上げた文献は殆ど目にしない。太治郎、そして弘道さんのこけしを語る時に付随的に出てくることが多い。そう、いつも脇役であって主役になれないこけし(工人)と言って良いのかも知れない。しかし果たしてそうなのだろうかと思う。今回の落札こけしを見ていて、そこには確かに正一の世界が広がっているのを感じるのである。

太治郎型こけしは私の好きなこけしの1つではあったが、そのこけしが集まり出したのはここ5、6年くらい前からである。その大半はネットオークションからの入手であるから、このネット社会に感謝をしなければばらないのであろう。そんな中で正一さんの太治郎型は昭和20年代の末から30年代にかけてのものが殆どであった。正一さんのこけしには、その製作日付が記されているものが多いので収集には便利である。それらのこけしは太治郎の晩年作を意識したもので、目尻が下がった表情のものが多い。

Syoichi_tajiro_s25_hikaku 本こけしの胴底には「土湯温泉 斉藤太治郎二代目こけし 佐藤正一作 四十六才 昭和二五年十一月二三日」と細かく書かれている 正一さんは昭和16年からこけしを作っているが、それらを含めて昭和20年代半ばまでの作品はあまり見かけない。よく見かける正一こけしは昭和28年以降である。そういう意味からもこの25年作というのは貴重である。このこけしには他の正一こけしとは決定的に違う点がある。それは頭が嵌め込みではなく、胴部への差込になっていることである。胴は上部が平らになっており、そこに頭を差し込んであるので引っ張ると頭が抜けるのである。面描では、横鬢が顔の真横に描かれ、前髪も短めであるために顔全体の面積が広く、そこに大振りの眉と目をゆったりと描いている。目尻に膨らみがあるために下がって見えず、健康的で若々しい表情になっている。写真(3)左はほぼ同寸の太治郎こけし(昭和10年頃)である。並べて見ると、その味の違いは明白である。

 

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