第122夜:鉄則さんの初期幸兵衛型
以前書いたように、鉄則さんが最初に手掛けた幸兵衛型は一側目のこけしである。昭和35年頃のものは頭頂に髷の付いた四角い顔のこけしで、クリクリ目の愛らしいものである。この手のこけしは胴上下に赤、紫、緑の太いロクロ線を引いている。その後、このロクロ線は細くなり、頭も丸みを帯びて眼点も小さくなる。ところで斉藤幸兵衛のこけしの目は上下に瞼のある二側目であり、鉄則さんがどうして一側目の幸兵衛型を作ったのかは良く分らない。「盛秀一家のこけしの辞典(二)」を見てみると鉄則作二側目の幸兵衛型こけしが姿を現すのは昭和38年頃であり、それより古い類例は見当たらない。そこで似た木地形態を探すと、昭和36年の一側目の幸兵衛型が頭の形、胴の長さが合致する。また署名も「黒石市温湯」とあるのは昭和36年頃と一致する。従って、今回のこけしの製作年代は昭和36年頃と考えられる。それまでの一側目幸兵衛型を見ていた収集家あたりから何らかの働きかけがあったのかも知れない。
今改めて昭和38年の二側目幸兵衛型を見てみると、木地形態・描彩とも一通り完成しているのが見て取れる。それと比べると今回のこけしは頭が大きく縦長で、胴も含めてほぼ3頭身になっている。後年のスマートな幸兵衛型と比べると如何にも稚拙な感じを受けるが、表情には気負いも見られず素朴で素直なこけしであり、鉄則幸兵衛型の原点として貴重なこけしと言えるだろう。再び、前回のこけしと並べて見た。木地形態、描彩ともその変化が見て取れて楽しいものである。
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