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第129夜:記念こけし(4)

Fukujyu_tatibana_kao 昭和55年のゴールデンウィークのことだったと思う。当時の私はこの連休に鳴子の遊佐福寿さんを訪問することが恒例となっていた。昭和55年の時点では福寿さんとは馴染みとなっており、この時の訪問でもお店の座敷に上げて貰い、こけしの話に花が咲いた。その時に1本のこけしを見せて頂いた。それは橘文策氏の勘治こけし(『橘勘治』と呼ばれているもの)であった。もっともその時にはそんな認識は無く、それは後日分かったことであったが。翌56年の正月、新宿の京王デパートで開かれた忠蔵庵による新春こけし展の目玉として、福寿さんの橘勘治写しが出品されていた。今夜はそれを見て頂きたい。

Fukujyu_tatibana_3hon この頃、忠蔵庵は東京周辺で積極的に大規模なこけし展を開催しており、毎回目玉として人気工人の写し(復元作)を出品していた。このこけし展では、橘勘治として8寸5分の菊模様と7寸の楓模様、それと頭頂部に髷の描かれた8寸5分(『橘大正型』と呼ばれているもの)の3本の福寿作品が出品されていた。これが橘勘治型こけしの頒布としては最初のものと言って良いであろう。8寸5分の2本には胴底に「忠蔵庵」のゴム印が押されている。いずれも福寿さんの気迫のこもった力作であった。これを見て前年に福寿さんに見せて貰ったこけしが橘勘治であり、当時福寿さんはその写しの製作に取り組んでいたことが分かったのである。頭頂部が平たい橘勘治は「原」こけしより頭がやや角張り気味ではあるが見事に「原」を写している。切れ長の二重瞼は黒目がちで凛としており得も言われぬ情味を感じる。一方、橘大正型の表情(特に目の描彩)は同じ二重瞼であるが黒目が小さくて鋭く、「原」こけしよりはむしろ先頃入手した盛大正型に近い雰囲気である。福寿さんはこの2本のこけしを見事に描き分けているのである。この3本のこけしは、翌57年の1月に友の会の「手帖」にて特別頒布をされている。

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