第138夜:丑蔵礼賛(2)
さて、戦後の丑蔵さんのこけしは昭和30年頃までは湯田時代の作風を残しているが、31年以降になると変化が見られるようになり、植木昭夫著「愛こけし」に見られるように種々なものが作られるようになる。その一環として文六型も作れたのであろう。「こけし手帖(463)」の<例会ギャラリー>に丑蔵さんの文六型が載っている。昭和30年作となっており、このあたりが丑蔵作文六型の出発点でなのであろう。品のある表情をしており胴の重ね菊も大人しい。
本掲載のこけしは69才作で大きさは8寸3分。昭和32年ということになる。31年頃からの丑蔵こけしの特徴である縦長で角張った頭、左右の眉・目の中央への寄りがはっきりと表れている。目の高さは中央よりやや下で、眉は上方に描かれているために眉と目がかなり離れている。これも表情をコケティッシュにしている一因であろう。実に剽軽で愛らしいこけしである。肩には文六型の特徴の一つである段が付き、肩の山と胴の上下に紫の波線入りのロクロ線が配されている。ロクロ線の間に描かれた3段の重ね菊も力強い。胴の裏模様はアヤメである。丑蔵こけしの楽しさを十分に味あわせてくれる1本である。
| 固定リンク
「遠刈田系」カテゴリの記事
- 第993夜:こけし談話会(正吉・英次)(2015.02.09)
- 第992夜:友の会新年例会(H27年)(2015.01.26)
- 第967夜:友の会9月例会(H26)(2014.09.28)
- 第966夜:日本こけし館の入札品(2014.09.24)
- 第957夜:北岡のこけしたち(2)(2014.08.28)
コメント