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第131夜:昭二さんの岩蔵型

Syoji_iwazo_s35kao 新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。昨日の大晦日は段ボール詰めのこけしの整理を行った。飾る場所が限られているため、その多くは再び段ボール箱の中に戻るのであるが、それでも久しぶりに懐かしいこけしに会えるのは楽しいものであり、あっという間に時間が経ってしまう。そうこうしながら新年第1回(夜)で何を取り上げるかを色々と考えてみた。昨年は定評のあるこけし、話題性のあるこけし、珍しいこけしを中心に話を展開してきた。しかし、そうでない普通のこけしにも素晴らしいものが沢山ある。今年はそういうこけし達にも目を向けて紹介していきたいと思う。そのトップバッターとして今夜は桜井昭二さんの岩蔵型を取り上げてみた。

鳴子系の長老である桜井昭二さんは現代の名工に名を連ねる工人であり、こけし収集家・愛好家で知らない人は無いであろう。何を今更と言われるかも知れない。私も昭二さんの永吉型については集中的に集めており、第59夜ではその初期作を紹介している。ところが昭二さんの本命である岩蔵型については今一つこれと言うものが見つからず持っているものも多くはない。「木の花(第拾号)」の<戦後の佳作⑩>では北村勝史氏が昭二さんを取り上げており、昭和41年作の岩蔵型5本を代表作として紹介している。爽やかな一筆目と大頭が印象的なこけしで円熟期に入った昭二さんの岩蔵型である。ただ私には定型化した胴模様と特に赤が滲んでぼーっとしているのが気にかかってしまう。

Syoji_iwazo_s35 今回紹介するこけしは昭和30年代半ば頃の岩蔵型と思われる。「桜井昭二と第八回伝統こけし三十人展」の小冊子の中で柴田長吉郎氏は昭二さんの岩蔵型について次のように述べている。「昭二は昭和25年頃から、岩蔵型のこけしを作り始め、昭和34~35年頃には、それを消化して完全に自分のものとしたすぐれた岩蔵型を作っている。此の頃の昭二の岩蔵型は、岩蔵の特徴をあますところなく捕らえており、それに昭二の個性が加味されて、独特の味を持ったこけしである。その後、昭二は、庄司永吉型を作ったが、この頃より、岩蔵型は永吉型の影響を受けて若干変化せざるを得なかった。」と。昭和35年の第3回全日本こけしコンクールでは岩蔵型で通産大臣賞を受賞している。柴田氏の評は実に的を得ている。本作は柴田氏が言う正に昭和34~35年頃の作であろう。極端に大きくない蕪頭を、これも太過ぎずすらりとした胴が受けとめた木地形態がまず美しい。胴上部の赤いロクロ線とその下の鉋溝が、無地のままのシンプルな肩の山を支えている。胴模様は横菊、正面菊、菱菊を一面に散らしているがそれぞれに動きがあった定型化していない。滲みのない赤が鮮やかである。面描は岩蔵を引き継いで、眉目、鼻、口、横鬢などが顔の上の方にこじんまりと描かれているが、眼点の入った一側目は凛々しく若々しさに溢れている。私はこの時期の岩蔵型が一番好きである。何と言っても、単なる岩蔵の写しではなく昭二さん自身のこけしになっているからである。

Syoji_iwazo_h13 そんな昭二さんの佳作こけしであっても中古市場での価格は驚くほど安い。入手する方にとっては有り難いことであるが、ちょっと寂しい気もするのである。この後、昭和40年代からのこけしブームによって昭二さんも各種岩蔵の写し(復元作)を作り、その他の型にも挑戦していくのだが、その分昭二さん自身の岩蔵型という面が希薄になってしまった感もするのである。写真(3)は「木の花(第弐号)」の<連載覚書(二)岩蔵こけし>に掲載された中屋氏蔵品6寸の写し(平成13年1月の友の会頒布品)である。筆は細いが気品のある一側目が写真(1)(2)の岩蔵型と相通じるものを感じて久しぶりに入手したものである。

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