第136夜:今年初入手のこけし
私がこけしの収集を始めた昭和40年代の後半は既にこけしブームに入っており、所謂「三蔵(丑蔵、忠蔵、武蔵)」のこけしも入手難なものとなっていた。丑蔵さんのこけしも年齢的に枯れた味わいのものとなってきており、殆ど入手することもなく月日は経っていった。私が丑蔵こけしに惹かれ始めたのは東京こけし友の会の入札品を見てからである。60才台から70才台のものには何とも魅力的な表情のものがあり、この入札で何本かを入手した。これらについては今後順次紹介したい。
さて、丑蔵こけしについては「木の花(創刊号)」の<戦後の佳作①>で76才作が、また「木の花(第弐拾七号)」の<戦後の佳作(最終回)>では77才作が取り上げられている。佳作選者の北村勝史氏は、この76才から77才頃が戦後の丑蔵こけしの中でも佳作が多いと紹介している。
今回入手の丑蔵こけしは77才の作。湾曲の少ない三日月目は一見では何となくぼーっとした表情にも見えるが、実は集中度のある凛とした面描でじーっと見ていると思わず引き込まれてしまう不思議な魅力をもったこけしである。頭は角張っておりやや長め。8寸であるが胴は長く、相対的に頭は小さい。決して均整のとれた木地形態とは言えないが、それなりに見えてしまうところが丑蔵こけしたる所以か。木地にシミが出ているが退色は全くなく保存状態は良い。上下の赤と緑のロクロ線の間に描かれている4段の重ね菊は全体的の下寄りになっているため、葉の描かれた上部の空間がやや不安定に見える。また花弁の筆使いもやや散漫な感じを受け、頭部に比べると胴部がやや弱い印象を受ける。胴裏下部には小さな4つ花が一輪描かれている。このこけしもそうであるが、丑蔵こけしの魅力は、その表情の多様性にあるのであろう。
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