第151夜:30年代の松三郎こけし
伊藤松三郎さんは明治27年の生まれ。こけしは昭和13年から作っており、特に40年代以降の所謂こけしブームの頃は、鳴子でも最も人気のあった工人である。その割には文献等での紹介は少なく、「木の花」でも取り上げられていない。戦前のこけしは肩の山が大きく盛り上がり、丸頭で可憐な表情のこけしであった。40年代以降は頭が縦長で眉が太く風格のあるこけしに変貌していく。
本稿のこけしは大きさ6寸、胴は反りが殆どなく直線的で肩の山が大きい。胴底は切りっ離しである。頭はやや角張っているが、表情はおぼこく戦前の面影を残している。第101夜で息子の松一さんの昭和20年代のこけしを紹介したが、それと比べるとやや新しさを感じるので30年代の作ではないかと思っている。40年代以降のこけしとは明らかに作風が異なっている。いかにも鄙びた山村の童女を思わせ、見ていると自然と心が和んでくるようなこけしである。昨夜の健三郎さんのこけしとは同じ6寸で、ブルーがかった緑の色調も同系統で、時代的にも同じ30年代のものと思われるが、全く異なった印象を受けるのも面白い。
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