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第148夜:キナキナの魅力

Jitutaro_s20dai_kao 今日は東京近辺でも朝から雪がしんしんと降っており、2年振りに一面の銀世界となっている。こういう休日はこけしを整理するには格好で、朝から普段しまってあるこけしを出して眺め始めた。ちょうど開けた棚には南部系のこけしが入っており、キナキナを並べて見た。こけし鑑賞の重要なポイントに表情が有るわけで、そういう点では顔のないキナキナは鑑賞の視点も当然変わってくる。中心は木地形態で、形態美を競うことになる。また材質の違いによる木目とか木地の色合いもポイントとなるであろう。今夜は煤孫実太郎さんのキナキナを見てみよう。

Jitutaro_s20dai 南部系の煤孫実太郎さんは煤孫茂吉さんの長男で明治41年の生まれ。大正12年の小学校卒業後の9月より木地修業を始めたとある。キナキナは当初より製作しており、父茂吉名義のキナキナの中に実太郎さんの作が紛れ混んでいるという。本稿掲載のキナキナは「花巻 煤孫実太郎 岩手」との底書きがある。頭は小さく、胴は長め。胴の上から1/3位のところに帯を巻いている。茂吉作と言われるキナキナとほぼ同形のものであり、茂吉さんが未だ製作をしていた昭和20年代のものと思われる。

実太郎さんのキナキナには、帯付き、帯無し、おしゃぶり形の3種があるが、帯付きが有名でこれが最も多いのではないだろうか。この帯付きキナキナで実太郎さんの経年変化を追って見た。右から2番目は20年代後半頃の作と思われるが、胴がやや短くなり、帯から上の胸の部分が丸味を帯びている。帯の幅が細くなって、その分形態的に締まって見える。頭は横広の平頭で大きい。30年代の初め頃までは、胴底の畳付きの部分に面取りが施してある。3番目は30年代の前半頃で胴がやや太めとなり胸も丸く、ボリューム感のあるものとなっている。4番目は昭和35年作。肩が張って少しスマートな形態になってきている。5番目は昭和40年代。帯による絞りが少なくなりずん胴に近くなり、また頭も縦横の長さが同じ位になってきた。左端は昭和51年。帯は太く、それによる絞りも益々小さくなって直胴に近くなった。頭も縦長である。形態だけが見所であるキナキナも、こうして長い期間で比べてみると相当の変化があるものである。こけしにおける40年代以降の「近代化」はキナキナにおいてもはっきりと表れているのが興味深い。Jitutaro_hikaku

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