第146夜:大沼竹雄のこけし
大沼竹雄さんは明治33年の生まれ、鳴子系の主要系系列である岩太郎系列の祖である大沼岩太郎の孫にあたり、鳴子系の本流の直系である。「こけし辞典」によれば子供の頃から木地業に親しみ、こけしも早くから作ったと言うが、昭和15年1月、41歳の若さで早逝した。竹雄さんのこけしは大きく「草書体期」と「楷書体期」の2つに分かれる。「草書体期」のこけしは古鳴子の風格を持つ野趣溢れるものであったが、「楷書体期」になるときっちりとした明敏な雰囲気のこけしとなる。
今回入手のこけしは「楷書体期」の作。大きさは尺2寸5分。面描が顔全体に比べて小振りで、鬢飾りが小さいことから昭和10年前後の作と思われる。同時期と思われるこけしは「山形のこけし」302頁の高梨氏のコレクションに見られる。いかにも鳴子系の本流(タイプ)を思わせる格調の高いこけしである。この時期のこけしの表情は端正で、凛とした乙女を思わせ、頭頂部の大きな赤い水引が彩りを添えている。なお描彩の赤色はややピンクがかった赤で、これも年若い女性らしさを助長しているようだ。胴には薄く黄色を引き、その上に横長の大輪車菊を2つ描いているが、上部の車菊は下部と比べてやや小さめに描かれている。また大寸物のためか間に小輪の車菊を2つ添えている。この車菊模様は今では大沼家のトレードマークともなっており、こけしの胴模様の中でも完成度の高いものの1つと思っている。未だこけし収集を始めたばかりの頃、この車菊模様のこけしを探し求めたことを思い出す。この後は面描が顔一杯に大きくなると共に鬢飾りも大きくなりが、水引はやや小振りとなる。「こけし鑑(原色版)」に見られるように、胴の2輪の車菊も大きくほぼ同じ大きさとなり様式化されてくる。
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