第154夜:盛秀幸兵衛型(善二)
ヤフオクでこのこけしを見た時に私の頭の中に浮かんだのは、あの写譜の秀太郎こけしである。善二さんは昭和30年代の後半から幸兵衛の原品による幸兵衛型の製作に取り組み37年には原に肉薄したこけしを作っている(第61夜、62夜を参照)。しかし本掲載こけしは秀太郎さんの幸兵衛型なので、本来は作らない(作ってはいけない)こけしということになる。恐らくは収集家の強い希望により作らされたものと思われる。とは言え、善二さんも流石に「原品」と同じように作ることには抵抗感があったのであろう、幾つかの点を自己流に変えている。先ず木地形態では、肩の部分に段が付いていることである。鳴子系のように肩に段を付け、その山の部分に赤いロクロ線を1本引いている。次ぎに描彩面では、胴上下のロクロ線の配色を変えている。原品は幸兵衛独特の赤と紫の2色を交互に配した印象的なものであるが、本作では紫の代わりに緑を使っている。しかも緑は胴下部の2本だけで、胴上部は全て赤で纏めている。そうすることによって全体の印象を変えようとしたのかも知れない。しかし、ロクロ線の太さと本数はほぼ原品通り、これを変えるのは難しかったのであろう。他には前髪の先をロクロ線のままにして手書きが加えられていない。そして問題の眼点も白抜きにはなっていない。ちなみに胴底の署名は「温湯 善二」となっており、「幸兵衛型」とは書いていない。この型のこけしはこの時だけで、殆ど作られてはいないと思われる。そういう意味で、敢えて善二さんの『盛秀幸兵衛風』として取り上げてみたのである。
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