第157夜:盛秀幸兵衛型(恵介)
写真(2)に私の手元にある恵介さんの盛秀幸兵衛型を並べて見た。右から04年5/24(8寸)、05年7/13(7寸)、05年7/15(7寸)。従って左2本は同時期に作られたものと言える。ご覧のように同じ盛秀幸兵衛型であるが、雰囲気はかなり異なる。「原」となる盛秀太郎さんの幸兵衛型こけしは「写譜」掲載品を初めとして数本が知られており、それぞれに違いがあるために、そのどれをモデルにするかによっても出来上がるこけしは違ってくるのであろう。注目すべき点は、木地形態(特に頭の形)、顔(特に目)の描彩、胴のロクロ線の様式などであろうか。右端のこけしは肩がなで肩でラグビーボールのような縦長の頭が特徴的。面描では顔の半分位まで前髪が覆い、両目の上瞼の目尻が鯨目風に上に湾曲している。眼点が大きくまっすぐに前を見据えていて、ややユーモラスな雰囲気も湛えている。この目尻の跳ね上げについては、秀太郎さんの「原」こけしにも確かにそのような面描のものがあり、鉄則さんのこけし(第155夜参照)も右目の上瞼の目尻は上に跳ねている。(但し、前夜紹介した陽子さんのこけしにはその特徴は見られない)。真ん中のこけしでは縦長の頭がやや短くなり、その分前髪も上に上がって顔の面積は広くなった。上下に凸の紡錘型の目は目尻が上がらず集中力に溢れ、陽子さんの盛秀幸兵衛型と同種の雰囲気を持っている。胴は直線的でシャープであり、ロクロ線の様式は右のこけしと同一である。左端のこけしは胴の中程がやや膨れた感じで、縦長の頭は頭頂部が平たくやや下膨れの感じで、真ん中のこけしと比べてふっくらとした印象を受ける。眉毛は湾曲がなく下がり気味、上瞼が長く横に延びた瞳は何か哀愁すら漂わせている。これを彷彿させるような「原」が存在するのであろうか。それとも恵介さんの個性の表れなのであろうか。なお、胴のロクロ線の様式はこの左端のこけしが最も盛秀こけしに忠実である。この3本の盛秀幸兵衛型こけしには白抜きの眼点は見られない。陽子さん、恵介さんの代になってからは忘れられてしまった描法なのかも知れない。いずれにしろ、恵介さんのこけしは刻一刻と変化しており、それらが今後どのように変わっていくのか興味が持たれるところである。
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