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第160夜:ピーク期とその周辺のこけし

Hisashi_s31_kao どんなに優れた工人でも、いつも優れたこけしを作っている訳ではない。好不調の波もあれば、年齢による作風の変化もある。そうした中から所謂「ピーク期」のこけしなるものが語られ、「木の花」等の書物によって紹介されている。「木の花」はこけしに造詣の深い方々が記事を纏めているだけあって、「なるほど」と納得出来るものが多い。しかし故人となった工人のピーク期の作の入手は、人にもよるが容易でないことが多い。そこで、その周辺までを含めて見てみたいと思う。今夜は弥治郎系の新山久志さんのこけしである。

弥治郎系の本流とも言える新山家で、新山久志さんは名工久治さんの長男として大正4年に生まれた。昭和5年、尋常高等小学校を卒業と同時に木地修業を始め、こけしは戦前から作っている。「木の花(第拾四号」の「ピーク期のこけし(一)」で久治さんと共に紹介されている久志さんのこけしは昭和30年作、同(第弐拾五号)」では29年作が載っているので、29年から30年頃が「ピーク期」ということになっている(「こけし辞典」では28年頃から33年頃までがピークとやや幅が広い)。29年から30年の作は表情鋭く素晴らしいこけしであるが、私は一度も出会っていない。なお、昨日見てきた「天理ギャラリー」には久治さんと久志さんの戦前のこけしが出品されている。共に素晴らしい作品である。

Hisashi_s31_2さて、先々週のヤフオクに「31.11.2」と底書きのある久志こけしが出品されていた。ピーク最盛期のこけしと比べると瞳が大きく、凝視度もそれには及ばないがなかなか良い表情のこけしである。8寸という大きさも手頃。この手の久志こけしは数年前に1度ヤフオクに出品されたが、その時は競り合いに負けた。今回はその時の半値程度で落札出来たのはラッキーであった。頭の形はピーク期ほど横広ではなく球形に近くなっており、胴もやや細めでスマートになっている。頭頂のロクロ線は太い赤線の間に細かい紫線を多数並べており趣がある。面描は眼点が大きくなった分、きつさが和らいでいるが、乙女の凛とした風情は保っている。胴のロクロ模様は、ロクロ線とロクロ線の間隔が開いて、やや充実感が薄れた感じを受ける。ピーク期の後に訪れる、ちょっとホットさせるような雰囲気を漂わせたこけしと言えるのだろう。

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