第159夜:天理ギャラリー
エレベーターを9階で降りると展示会のポスターが貼ってあり、その前を右手に進むと受付がある。ここでパンフレットを貰って会場の中に入る。ちなみに入場料は無料である。東京の天理ギャラリーでは年に3回このような展示会を開催しているとのことであったが、次回のこけし展示の予定は未だ決まっていないとのことであった。
さて会場に入ると、正面には目玉である鳴子系、高橋勘治のこけしが1本単独で展示されている。広い会場に1本だけ置かれているためか小さく感じる。会場は1フロアで、入口から入って左手のケースには弥治郎系こけしが21本、それに続いて正面奥左手のケースには同じく弥治郎系こけしが15本、その右手のケースには鳴子系こけしが11本、入り口から見て右手のケースにはロクロと材料の木地が置かれ、こけしが出来るまでの様子が分かるようになっている。3月7日(金)と20日(祝)に予定されている佐藤誠孝さんによる実演はここで行われるのであろう。また入口側のケースには鳴子系こけしが24本並んでいた。他に単独のケースが5個あって、1つには弥治郎系の目玉である佐藤今三郎が単独で1本、次のケースは佐藤春二と佐藤慶治2本の計3本、次のケースには大沼岩蔵と健三郎が1本ずつ、また次のケースには高橋武蔵が2本、そして勘治のケースの横には大きな御所人形が1体展示されていた。こけしは総数で80本展示されているとのことであった。なお、ここに掲載している写真は友の会の取材ということで、遠方からのものを数枚特別に撮らせて頂いたもので、会場内での撮影は禁止となっている。今回のこけし展のために作られた図録が600円で売っているので、これを購入してこけしをじっくりと眺めるのが良いと思われる。
こけしは戦前の古品が主体であり、保存の良いのが印象的である。木地の焼けが全く無いため、また退色も殆どないために60年以上も前のものなのに実に瑞々しく見える。とは言え80本全部が一級品ではなく、中には戦後のもので普通に見られる物も含まれており、この当たりは所謂こけしの専門家が選んだものとはちょっと見方が違うのかも知れない。戦前のものと戦後のものが同列に並んでいるとやはり違和感を感じることもある。それにしても戦前物の多様性には目を見張るものがある。鳴子系、弥治郎系という系統の制約はあるものの、その中では各工人の個性が発揮され、随所に工夫の跡が伺われる。人生に例えれば、活動的な青年時代のこけしということが言えるのかも知れない。それは戦後、昭和40年代からこけしブームの中で成熟していき、今は老年期に入ってしまったのではないかと思えてしまう。
鳴子系と弥治郎系という2系統に限られるが、勘治を初めとして名品と言われるようなものも含まれおり、東京の都心で1ヶ月以上もの会期で開かれており、しかも無料ということなので出来るだけ見に行かれることをお奨めしたい。
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